—— 睡眠薬を飲んでいる時期は、男優業はどのような感じでしたか?
ムーミン 台詞もまともに言えないし、最悪の場合は現場に行かなかったり、そしてチンコも勃たない状態だったので、ほとんどのメーカーからNGをくらうようになっていましたね。もちろん女優さんからもたくさんNGを出されました。今でもNGになっている現場が多いので、おそらく最もNGが多い男優だと思います。
—— まともな状態ではなくなってしまったのですね。
ムーミン 業界は狭いのですぐに噂が回って「ムーミンはもう別人になって使い物にならないよ。手が震えて領収書は書けないし、弁当もすぐに吐いちゃったりするし、アイツはヤバいよ。」って誰も使ってくれなくなりましたね。
—— その時の私生活はどんな感じだったのですか?
ムーミン 結局、依存症が進んで、閉鎖病棟に入院しました。持ち金が残り千円になったとき、「これじゃ睡眠薬が買えないじゃん!」ってパニックになって禁断症状が出てしまったんです。睡眠薬依存症の人って、禁断症状が出ると死んでしまうことがあったりとかなり危険なんですよ。
—— 死に直結するほど危険な状態なんですね…
ムーミン リラックスしていた体が「睡眠薬がない」ってわかった瞬間に一気に緊張しちゃうので、心臓が止まるケースがあります。睡眠薬依存症の人は、睡眠薬を飲み続けないと死んでしまうんです。
—— 千円しかない状態で禁断症状が出てしまったというお話ですが、どのように入院されたのですか?
ムーミン 僕の状態を知っていた親が「本当に困ったら○○病院に日本一の先生がいるから必ず行きなさい。」って言ってくれていたんです。正直その時の僕はまともな判断ができる状態じゃなかったので奇跡的だと思うんですけど、ギリギリのところでその話を思い出して、残りの千円を使って電車に乗りそこの病院に行ったんです。
—— もしその時に病院に行っていなかったら?
ムーミン 間違いなく死んでいましたね。なので神様が導いてくれたんだと思います。病院に着いたら先生に「君は今までで一番ヤバい状態だからすぐに入院が必要。」って言われて、即入院することになったんです。そこは急性期病棟だったので、3ヶ月で退院しないといけなかったんですね。出た後にまた睡眠薬を買いたかったので、全然使いモノにならないですけど男優の仕事をやっていたという感じでした。
—— 睡眠薬は止められなかったのですね。
ムーミン そうですね。こんな僕でも生活のためだからと、日比野監督とかまさのり監督、麒麟さんなど優しい監督たちが情けで使ってくれていたんです。でもこんな方達にも最後は見放されてしまいましたね。
—— 完全に業界から干されてしまった訳ですね。
ムーミン 2018年頃には年間で仕事が一個も無くなっていました。そして入退院を繰り返しながら、生活保護を貰って自堕落な生活を送っていたんです。しかもこんなにラリっていた僕をヒモにしてくれる女の子がいて、その子にお世話になったりもしていて(笑)。あの出来事は忘れもしません、2019年の僕の誕生日の日だったんですけど、佐川急便でリハビリを兼ねて倉庫整理の仕事をしていた時に心臓が止まってしまったんです。
—— え!? それは睡眠薬の飲み過ぎが原因ですか?
ムーミン いや僕は東京都からマークされて、どこからも睡眠薬を出して貰えなくなっていたんです。生活保護を受けると、一箇所の医療機関にしか行けなくなるんです。
—— 「医療券」が発行されるからですね。
ムーミン 通っていた医療機関から睡眠薬ではなく向精神薬のヒルナミンを処方されていたんです。これは比較的催眠作用が強いクスリみたいで……。裏ルートでたくさん集めて50錠くらい飲んでいたのもあるんですけどね(笑)。心臓が止まって目が覚めたら先生に「あれ…君は一度死んだはずなのに、なんで生きてるの?」って驚かれました。聞いたら8時間くらい目が覚めなかったみたいで、心電図も一度停止したらしいんです。
—— 奇跡体験ですね。
ムーミン でも奇跡はそれからで、生き返ってからは一切クスリを欲さなくなったんです! その日から一錠も飲んでいません!
—— あれだけ睡眠薬漬けの日々を送っていたのにですか!?
ムーミン そうなんです。アンビリーバボーですよね(笑)。その日の夜も看護師さんが「寝れないなら飲みますか?」って睡眠薬を持ってきてくれたんですけど、全く飲みたいと思いませんでした。