藤かんな『はだかの白鳥展』本人解説レポート!
SNSで日本中から総バッシングを浴びた「AV女優バレエ教室解雇騒動」から2年。あの炎上の渦中にいた藤かんなが、ついに自身のすべてをさらけ出す。
AV女優になったことで、会社を辞め、バレエ講師も解雇。ネットでは容赦ない言葉が投げつけられた。それでも彼女は立ち止まらず、痛みや葛藤、怒りや哀しみを言葉に変えてきた。その文章は人々の心をざわつかせ、ときに笑わせ、そして涙を誘う。
これは藤かんなという女性ができあがっていく、破壊と再生の記録。過去と向き合い、今を生き、未来に光を見出そうとする彼女に、あなたは何を見るだろうか。
写真家・西田幸樹氏による写真集『白鳥、翔ぶ』未収録カットを多数展示。4刷を記録した著書『はだかの白鳥 阪大大学院卒でAV女優に』からの抜粋や、当時SNSに寄せられた実際の中傷の言葉も展示される。
「藤かんなEXPO」とも言える異例の展示「はだかの白鳥」展は、5月1日~11日、東京・渋谷「SACS渋谷」にて開催。本展に込めた思いや見どころを、藤かんなさん本人が語ってくれた。
2年前のバッシングとバレエへの思い
当時のバッシングは、あまり自分事として感じていなかったんです。「AV女優がバレエを教えるなんてありえない」って言われるのも、「確かにそう思う人もいるよね」くらいの気持ちだったんです。
「灰になって死ね」と書かれても、「どうせ殺されないし」くらいに思っていたんですけど、やはり中でも刺さったバッシングってあったんです。それが「こいつバレエのド素人のくせに」って言葉だったんです……。
「こいつのバレエ動画、そこらへんのなんちゃってバレエをやっている人よりも下手くそやん」という書き込みを見た時はすごく腹が立ちましたね。
バレエは私が小さい頃からずっとやってきたもので、私のアイデンティティになっているんです。それなりに一生懸命頑張ったんですけど、それでもプロにはなれなかった苦しい思いがあったんです。それを何も知らない人が、簡単にバッシングすることに対して、想像以上にショックというか、苛立ちを覚えました。やはりバレエが私のウィークポイント、コンプレックスだったんだなって気づいたんです。
バレエとの関係
バレエが大事になった理由は……、なんなんでしょうね……。会場で上映されている動画でも言ってますけど、別にバレエが好きで好きでたまらないとか、そこまでの思いもないんです。
でも、小さい頃からずっとやっていて、辞めたいと思ったこともなくて、ただ、当たり前のように自分の人生の中にあったものなんです。上映されている動画を見てもらったら分かると思うんですけど、すごくガリガリに痩せていた時があって、私自身、あの姿を改めて見たら、「当時はこんな状態だったんだ……」って、ギョッとしたんです。「もう、こんなにひどかったんだ、私」って。
でも、当時はそんなことは分からなくて、バレエに対して一生懸命だし、一心不乱だったんです。
バレエが大事なものとなったきっかけですか? 特にこれという理由はないんです。でも、「今、バレエがなくなったら、楽になるのにな」っていう気持ちはとてもあるんですよ。もちろん踊っていて楽しい気持ちもあるし、今もレッスンは行ったりするし、舞台に立ちたいな、綺麗な衣装を着たいなという気持ちもあるんですけど、やはり、ガリガリに痩せたり、コンクールで全然上に行けなかったり、友達同士のライバル関係がドロドロしていたりとか、思い出したくない過去もたくさんあるし、両親にもたくさん迷惑、心配、辛い思いをさせた過去もあるんです。
なので、「いっそ、なくなってしまえばいいのにな」とも思うけど、十代の全てをつぎ込んでやってきたものだから、今もずっと抱え続けないといけない気持ちもあるんです。だから、生涯バレエとの関係はなくさないと思います。
「はだかの白鳥」展は何が展示されているのか?
この展示会は、まさに私の人生すべてを詰め込んだようなイベントなんです。基本的には文字と写真の展示会だと思っていて、私の著書である『はだかの白鳥』というノンフィクションの文章の中から、特に印象的な部分を抜粋した文章と、写真家の西田幸樹さんが撮ってくださった写真を組み合わせた展示なんです。
メインは『はだかの白鳥』の第4章「魂の叫び」と呼ばれている部分の展示です。そこは私がすごく生の感情を吐き出した部分で、文字の展示が中心になっています。
本の中では私の過去のことも書いているので、過去にバレエを諦めた時の衣装だったり、過去のバレエの動画だったり、そういうバレエ関連の展示もあるんです。だから、本当に藤かんなのすべてを詰め込んだ万博みたいな展示になっています。
縦3メートル、横8メートルという巨大な写真展示をしているんですが、現役のAV女優では前例がない挑戦だと思っています。
それに、何よりも『はだかの白鳥』をもっと多くの人に読んでほしい気持ちがあるので、書籍から抜粋した言葉も展示されているんです。深いメッセージもあれば、クスッと笑える言葉もたくさん盛り込んでるので、壁に大きく貼って、来場者にその言葉を直接感じてもらおうと思っています。
「はだかの白鳥」展で訴えたいことは?
訴えたいこと。そうですね、この展示会のテーマでもあり、私が文章を書く上でのテーマでもあるんですけど、「人生のドラマをエンタメにしていく」ことがテーマなんです。
私だけではなくて、みなさん、どんな生き方をしていても、しんどいこと、辛いことってあるじゃないですか。
でも、それをそのまま放っておくと、ただしんどかった、辛かっただけで終わってしまうので、私はそれを面白おかしく、時には切なく書いていくことで、心の中で昇華していったっていうのが大きいんです。
過去を消すのではなく、乗り越えるきっかけを与えてくれたのが事務所の社長なんですけど、書くことを通して、人生を前に進める感じがしたんです。
みなさんも多かれ少なかれ、そういう辛い経験あると思うから、この展示を見て、私がネットで大バッシング受けて、「死ね」とか、「消えろ」とか殺人予告がたくさんありましたけど、それも今、こうやって文字として書いて、堂々と見せることで、昇華していってるんです。
今回の展示を見て、来場者の方が元気をもらったり、前向きになったり、そういう気持ちになっていただけたらいいなと思います。
「はだかの白鳥」展で一番見てほしいもの
高さ3メートル、横幅8メートルの写真と文字の巨大展示は見てほしいですね。私の知る限り、著名なアーティストでも、なかなかあそこまでの展示はしていないと思うんです。現役AV女優が渋谷のど真ん中の素晴らしい会場で、ここまでの展示をしてもらえるって、本当にあり得ないです。
「私の今までのラッキーを全部使ったかな」っていうくらいのすごい展示なので、ここは絶対に見てほしいですね。
展示されている内容は「こんな腐った世界」とか、「塩酸で死ね」とか生々しい文字もあるけど、そのあとに希望を書いてるつもりなんです。ただ、ここに来られた方が展示を見てどう思うのかはすごく気になります。
だから、ぜひ展示をじっくり見て、自分の過去もいろいろ考えて、どう思ったのか、感想を一言でもいいので聞かせてください。どんな感想でも受け止めたいんです。
写真展パートの見どころ
西田先生が撮った写真は、去年の写真展、写真集ともかぶってない新しいカットを展示しているんです。写真展パートは全部見どころですけど、特に窓ガラスに貼られた写真はすごくないですか!
あそこが、まず見どころだと思うんです。実は、つい最近まで『ジョジョの奇妙な冒険』が貼ってあったんですよ。ジョジョ展の次に、私1人で貼られているって、もう喜び以外の何者でもないです。
トークショーについて
開催期間中は連日トークショーも行われるんです。ゲストがすごいので楽しみにしてください!
5月2日は蒼井そらさんがゲストに来てくださるんです。そらさんはAV業界を代表する方だし、アダルト業界を背負ってるような人じゃないですか。本当にすごい存在だと思います。
それに、女優をやって、お子さんを出産されて、子育てされているのも全部公表されてるじゃないですか。私が経験していない世界を一生懸命やっている方なので、そういう話も聞きたいと思います。
出産をされて、お子さんができて、その中でたくさんバッシングを浴びた報道や反応を見てきました。内容は違うけど、私と似たような経験をされた方だなって思うから、バッシングをされた時はどう思ったのか、今後そういうバッシングに対してどう対処していくのか、今後の人生のためにも教えてほしいですね。
アドトラックと写真コンテスト
渋谷や新宿、池袋で私のビジュアルが載ったアドトラックが走っているんです。アドトラックの見積もり、入稿期限、進行のやり取りなどは、私がメインでやってきたので、無事に走行できてよかったなっていう気持ちがあります。
私のドアップ写真がアドトラックに載って、東京都内をぐるぐる走るなんて、ちょっと怖いくらい嬉しいですし、達成感を感じています。
渋谷、新宿、池袋中心で昼の12時から20時まで展示期間中は毎日走ってるんです。街で見かけたら、ぜひ見てほしいです!
あと、アドトラックの写真を撮って、X(旧ツイッター)に「#はだかの白鳥 #アドトラ写真大賞」を付けて投稿してもらい、一番かっこいい写真には賞金5万円をプレゼントする企画もやってます(笑)。そういうプチイベントもやっているので、気軽に参加して、楽しんでもらえたら嬉しいです。
今後の夢
AVや執筆活動以外の夢は、そんなに欲張ったことは考えてなくて、その2本柱に集中したいんです。
特に小説を書きたいですね。たくさんのAV女優さんを見て、ちゃんと取材をして、蓄積させているので、AVが軸でもいいし、女性の生き方が軸でもいいし、そういう小説を書きたいと思ってます。
人生の起承転結で言えば、まだ「起」じゃないですか(笑)。始まったばかりです。まだ本も1冊しか出してないし、もっともっと書きたいんですよ。AVだって、まだ私のことを知らない人はたくさんいるし、本だって読んでない人もめちゃくちゃいるし、まだやれていないことだらけなんで、私の人生は始まったばかりです。
来場される方へのメッセージ
私の気持ちとしては『はだかの白鳥』をもっとたくさんの方に読んでもらいたいです。こういう展示会は、ぱっと見た人からしたら、「なんやねんこれ?」って思う人もいると思うんです。
でも、私たちのやりたいことをやらせてもらっているので、それを見た人が何を思うのか、その感想を一言でもいいから聞かせてほしいです。「意味が分からなかった」、「怖かった」、「気持ち悪かった」でもいいですし、中には「元気をもらった」、「感動した」という方もいると思います。そういう素直な感想、忖度なしの感想を聞かせてほしいです。
■「はだかの白鳥」展公式HP
(写真・取材:神楽坂文人)