希島あいり5thワンマンライブ『#Kijimania vol.5』ライブレポート!
彼女は、美しかった。大きな瞳は星のように澄みわたり、その姿は見る者すべての心を奪った。
だが、その華やかな外見とは裏腹に、彼女の内には、ひときわ繊細で触れれば壊れてしまいそうな儚さが潜んでいた。どこか怯えるように、影を宿した眼差し。そして、誰よりも不器用な人だった。
それでも彼女は、自らの意志でステージに立ち続けた。不器用なまま、まっすぐに。
「セクシー女優がライブ?」
当初、そんないぶかしむしむ声もあった。彼女自身、その声を耳にしていただろう。それでも、彼女は歌うことを選んだ。作詞、作曲、ギターを手にし、全力で音を紡いだ。その姿は美しさとともに、内に秘めた強い意志を放ち始めていた。
毎回、ライブで彼女は涙を流した。歌詞を間違えてしまったこと、緊張に押しつぶされそうになったこと、涙の理由は様々だっただろう。しかし、その涙は決して弱さではなかった。涙をこぼすたびに、彼女は再び立ち上がり、次のステージへと突き進む不屈の情熱を身にまとった。
昨年末の引退発表もまた、彼女のライブの最中だった。突然の宣言に、観客は戸惑いを隠せなかったが、彼女が最初にファンに伝えたかったという強い意志がそこにはあった。ファンへの深い愛と信頼が、彼女の心を突き動かしたのだ。
そして、引退発表から8か月後の7月31日、東京・初台TheDOORSにて、希島あいりの卒業記念ライブ「#Kijimania vol.5」が開催された。チケットは発売開始とともに瞬く間にソールドアウト。追加発売分も完売し、選ばれしファンが会場に集結した。そこには、彼女を愛し、彼女の音楽に心を重ねてきた人々の熱い想いが渦巻いていた。
ステージを支えたのは、ピアノ&コーラスの平方元さん、ギターの二木元太郎さん、パーカッションの豊田稔さんという、彼女を長年支えてきた信頼のバンドメンバーたち。共に歩んできた絆が、音のひとつひとつに息づいていた。
ライブは、彼女の心の奥底から溢れ出すメッセージとともに幕を開けた。「幸せって、どんな形をしているのだろう? そんな問いは、胸の奥から溢れ出す。うまくいかないことや、誰かの言葉に傷つくのが怖くて、気づけば私は自分の心にそっと鍵をかけて、閉じこもるようになっていた。でも、あなたと出会ったことで、無感情だった私の心は少しずつ、少しずつ動き出した。あなたの存在が、私の世界に色をつけていくのを感じられた。そして、気づいたんだ。誰かに必要とされたい。その思いが、強くなっていくのを気づいたんだ」。この言葉は、彼女の人生そのものを映し出す鏡のようだった。観客は静かに、しかし熱くその言葉に耳を傾けた。
1曲目は力強いメロディで始まる『この世界で』(オリジナル)。会場を青のサイリウムで埋め尽くし、まるで果てしない大海原のような光景を織りなした。続いて『Scarlet』(オリジナル)は情熱の炎が燃え盛るように熱く歌い上げ、会場を赤く染め上げた。『Story』(AI)は、シックで繊細な歌声が観客の心に寄り添い、まるで一編の詩のように響いた。
こして3曲歌った後に、「改めまして、こんばんは。希島あいりです。この12年間、皆さんと過ごした日々は、私の宝物です。今回のライブでは、今までの思い出と感謝の気持ちをすべて込めています。一曲一曲、大切に私の思いを歌に乗せて届けますので、どうか最後まで希島あいりを感じていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。今日という一日が、いつまでも皆さんの心に残りますよう願いを込めて、『365日の紙飛行機』」とファンへの深い感謝と、このライブにかける想いを真っ直ぐに伝えた。
『365日の紙飛行機』(山本彩)は、自身の人生と重ね合わせるように丁寧に歌い上げられ、まるで空を舞う紙飛行機のように軽やかで力強く響いた。
曲後、「もっと、もっと楽しんで! 座っていていいの!?」と彼女が叫ぶと、ファンは一斉に立ち上がり、会場は熱狂の渦に包まれた。『チ・ア・フ・ル』(オリジナル)は明るく弾けるリズムで、ファンも「チ・ア・フ・ル!」と大合唱し、会場は一体感に満ち溢れた。
盟友・AMATSUKA(天使もえ)さんの楽曲『innocent Angel』(AMATSUKA)は、尊敬の念を込めて情熱的に歌い上げ、会場は「あいり」コールに包まれた。会場の奥で見守っていたAMATSUKAさんの嬉しそうな表情も印象的だった。『悪戯』(オリジナル)は椅子に座り、しっとりと歌い上げ、静かなメロディが彼女の繊細な心を映し出した。
普段はロック調の『Desire』(オリジナル)をスローテンポで情感たっぷりに歌い、彼女の新たな一面を見せた。『叶わぬ恋』(オリジナル)は優しく、切なく歌い上げ、観客は息をのむように聴き入った。
次のMCで、「未来への希望と命の大切さを込めて作った曲を2曲歌います。たとえ不安や迷いがあったとしても、僕らはここにいる。そしてこの世界を生きている。未来は、今この瞬間を精一杯生きる僕らが作っていくものです」と訴え、平方さんの『いのちあるところ』では、涙を流しながら全身で歌い上げる姿が荘厳だった。彼女の人生の起伏を振り返るような歌声に、会場は深い感銘に包まれた。
『Resistance』(オリジナル)では、「人生は生きるためにあるよ」「自分だけの道を咲き誇れ」という歌詞を力強く、希望を込めて歌い上げ、観客の心に深く刻んだ。
続いて、「先月ぐらいにレコーディングをした新曲『ありがとう』という曲を歌わせていただきます。『ありがとう』という曲は、皆さんと出会った感謝の気持ちをたくさんのせた曲です。『ありがとう』がいっぱい出てくるんです。途中で歌ってくださいって言ったら皆さんも一緒に歌ってくれたら嬉しいです。初披露なのでちょっと緊張しているんですけど、この曲が皆さんにとって最高に素敵な1曲になったら嬉しいです」と言い、『ありがとう』(オリジナル)を明るく前向きに歌うと、ファンからも「ありがとう!」の声が響き合い、温かな一体感に包まれた。
ライブも佳境に差し掛かり、『僕が一番欲しかったもの』(槇原敬之)は笑顔で歌いながらバンドメンバーを紹介し、彼女の明るいエネルギーが会場を満たした。
「最後の曲は、私が最も大切にしている『希望の旋律』という曲を歌わせていただきます。皆さんと出会って、いろんな音や色をたくさんもらいました。その一つ一つの旋律が私を強く、時には優しく前へと突き動かしてくれました。皆さんとの出会いがなかったら生まれなかった曲なので、ぜひ歌える方がいたら一緒に歌ってください」と呼びかけ、『希望の旋律』(オリジナル)を全身全霊で歌い上げた。生命力溢れる歌声が壮大に響き、曲中に「皆さんと出会えて本当に幸せです」と語る場面が観客の心を強く揺さぶった。
ライブは終了し、彼女はステージを後にした。しかし、ファンからの「あいり! あいり!」という渇ききった時代に送る、まるで雨乞いの儀式のような熱烈コールが響き合い、彼女を再びステージに呼び戻した。
アンコールでは『幸せのカタチ』(オリジナル)をこれまでの女優人生を振り返るように情感たっぷりに歌い、続いて『ひまわりの約束』(秦基博)では大粒の涙を湛えながらも、2番の歌詞では笑顔を見せ、涙と笑顔が交錯する姿が観客の心に永遠に刻まれた。
そして、最後のMCでは、「今日は会場に来てくださってる皆様、本当にありがとうございます。そして、配信で見て見守ってくださっている皆さんも、本当にありがとうございました。音楽を通して、少しでも私の心の奥にある思いは伝わりましたでしょうか?」と観客に聞くとファンは大きな拍手で返答。
続けて、「ありがとうございます。音楽活動も気づけば11年ぐらいなんですけど、初めの頃は本当に全く自信がなくて、初めてステージに立った時も、声が震えたり、うまく歌えなかったりして、すごく悔しい思いをして、『私、歌っていいのかな?』と、すごく悩んだりした時期もたくさんあったんですけど、今はやっぱり私は歌うことが好きなんだって胸を張って言います。
『歌っている希島あいりが好きだ』。そう言ってもらえた時、自分で言うのはあれなんですけど、今までの努力が認められた気がして、すごく嬉しかったです。セクシー女優を卒業すると発表してから、たくさんの温かいお言葉だったり、問いかけ、質問をいただきました。
『きじーのことが大好きだから、まだまだ応援したい』って言ってくれたり、『せめて音楽活動だけでも続けてほしい』っていう言葉だったり、あとは『9月以降のスケジュールはどうなってるの?』っていう言葉が一番多かったです。本当はみんなに笑顔でいてほしいのに、結構寂しげな顔で、最近はお会いする機会が増えて、愛おしい気持ちというか、会うたびに胸が締め付けられちゃって……。
だけど、私よりも素敵な女優さんや魅力的な人がいるし、きっと私のことなんてすぐ忘れるんだろうなとか、ちょっと不安に思ったこともあったんですけど、音楽だけじゃなくて、いろんな活動を続けていく中で、本当に私のことを心から好きでいてくれてる人、私を必要としてくれている人がいるんだなって……。その必要とされている実感が、私の心を包み込んでくれて、涙が出るほど嬉しくて。
希島あいりとして過ごした12年間は、皆さんのたくさんの笑顔に囲まれ、愛に包まれ、本当に幸せでした。私はデビューして後悔はしていません。みんながいてくれたから、セクシー女優だけじゃなくて、音楽活動だったり、様々なことに挑戦できるようになったりして、本当に皆さんがいてくれたから、ここまで歩いてこれました。たくさんのご縁に感謝しております。本当にありがとうございます。
これから先、今までのような活動ができるかはわからないんですけど、私はこのステージに立って気づいたんです、みんなの笑顔が見たいなって思っちゃったんですよ。私を必要としてくれている方がいたら、これからも元気、勇気、癒しとかを届けられるように頑張りたいなって思っています」と今後の活動へ繋がる発言が飛び出した。
そして、未来への決意をこう語った。「これから先、どんな未来になっていくかわからないんですけど、自分が選んだ道を信じて一歩ずつ前に進んでいこうと思っています。よかったら引き続き見守ってくれたら嬉しいです。
また、みんなの前に必ず現れるので! 現れるよ! その時は『おかえり!』って言ってください」。
その言葉にファンからは大歓声と温かな拍手が沸き起こった。最後は「今日は素敵な1ページをありがとうございました。大好きな皆さんに心から愛を込めて。『君へ届け』お届けします。一緒に笑顔でこのライブを終えたらなと思っています」と言い、最後の『君へ届け』(オリジナル)を全身全霊で歌い上げた。
ライブは笑顔の記念撮影で大団円を迎えた。ファンに愛され、囲まれ、彼女は幸福の頂点でこのステージを締めくくった。
この夜、彼女の歌は、女の歌であり、心の歌であり、裸の歌であり、励ましの歌であり、生きる歌であった。そして何よりも、希島あいりの歌だった!
彼女の声は、涙と笑顔を織り交ぜながら、会場に集ったすべての心を強く揺さぶった。12年間の軌跡は、愛と挑戦の結晶であり、彼女を必要とする人々への無償の贈り物だった。
希島あいりの歌は永遠に響く。君が再び現れるその日まで、ファンは「おかえり!」の声を胸に秘め、待ち続けるだろう。この夜、彼女は伝説となった。そして、その伝説はこれからも歴史を積み重ねていくことだろう!
(写真・取材:神楽坂文人)
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