全国、津々浦々よりはせ参じた名だたる緊縛師たちが一堂に介し、その磨き抜かれた縛りの妙技を披露する全日本緊縛博覧会。
その記念すべき第1回が開催された。
会場に来ているお客さんは、ごく普通の人が大半。ちょっと昼休憩に寄ってみたって感じのサラリーマン風の男性や、デート途中っぽいカップル、西友で買い物した帰りみたいな中年女性からよくわからないけどコスプレしている人まで。そうかと思えば、あきらかにただ者じゃないタイプの方々ももちろん目立ってたけれど。
そんな人種のるつぼの中、敷き詰められた畳の上で行われる縛り。会場をぐるりと見渡すと、あちらこちらで緊縛が、って景色は考えてみると、シュールであり異様。しかし、どこか和やかなムードもある。緊縛が単に肉体を拘束するだけではないということがよくわかる風景だ。
これだけたくさんの緊縛師が集まるのは世界初。美少女緊縛師からほぼ全裸緊縛師、作務衣に身を包んだ外国人緊縛師もいれば、なぜかドラゴンボールのTシャツ姿の緊縛師までいる。もちろん強面のいかにもな緊縛師もにらみを利かす。そして、それぞれが独自の縛りテクを披露し、観客を魅了。ある緊縛師は縛る相手を抱きしめながら縄を通す慈愛の縛りを。またある者は、無駄のない動きで淡々と職人芸を披露する。会場内に組まれた鉄パイプを使った圧巻のパフォーマンスなど、貴重な技の数々を間近で見ることができた。やはり生の迫力は違う。ひと口に緊縛と言っても、これほど千差万別とは思わなかった。
また、縛られる側のタイプも様々。初めて自転車に乗った子供のようにワクワクした表情で縛られる人、頬を赤らめ恥じらいながらも縛りの魅惑にあがなえない人、もはやイベントであることも忘れ全身を痙攣させながらガチイキを魅せる人まで…。艶っぽい喘ぎ声も、緊縛のBGMとして、雰囲気を盛り上げる。
ダイナミックなのに繊細、苦しそうなのに気持ちよさそう、性的なのに聖的、そんな相反する要素がぶつかり合い、入り混じる混沌のアート、それが縛り。「SMだったらAVで観たことあるよ」、って人は多いだろうけど、生で観る縛りはひと味もふた味も違う。映像を見るだけではわからなかった、縛りの精神性もライブでならダイレクトに伝わってくる。
SMだとか縛りとかに偏見を持っている人や、ちょこっとAVで観てわかった気になってる人もまだまだたくさんいる。けれど、そういう人にこそ生で体験することをお勧めしたい。SMが単にエスカレートしたプレイってだけではなく、もっと根源的なものだということが分かるはずだから。
緊縛師と縛られる相手との関係性によって、一期一会の縛りが完成する。組み合わせ次第でエロティックにも、神々しくも、禍々しくもなる縄を介した魂のぶつかり合い。肉体を縛り拘束することで、むしろ精神は自由になるんじゃないだろうか。今やSHIBARIは日本海の荒波を乗り越えて、世界に浸透しつつあるという。いつか、能や歌舞伎のように緊縛も日本の伝統芸能として認められる日が来るかもしれない。
(デラべっぴん編集部)