――特に思い入れのある撮影シーンはありますか?
川上 最後のスタジオ撮影で黒髪ストレートにして、憧れだったテロッテロの黒いドレスを着て、自分で買ったダイヤのネックレスをつけて撮ったんです。いまある自分をありのまま撮ってもらいたくて。くまこさんはかっこいい女性を撮るのが好みというのもあったので無表情でスッと立ってという要望があったんですが、そこだけは私が伝えたい思いがより強くあって、「ありがとうの思いで撮りたい」と伝えました。
レンズを通してその奥にいるファンのみなさんや、目の前にいるくまこさんにも、「ありがとう」、「くまこありがとう」と声に出しながら二人で涙を流しながら撮影をしていました。その空間はとてもおかしくて幸せでした。
――涙が出たのはファンに対する感謝の気持ちですか?
川上 そうですね。いままで協力してくれて、これからも協力してくれるであろうみなさんのことを思ってです。
――そのカットが展示されていたら見てほしいですね。ヒカリエとダイトカイには在廊しますか?
川上 展示日程の三分の二くらいは在廊すると思います。SNSでも細かく在廊日をアップしようと思っています。
――それはかなりの日数で会えますね。あと、写真集と小説も出すんですよね。
川上 どちらも1月12日に出版します。
――小説は2年前くらいから半自伝的な内容で書いているって言っていましたよね。どんな内容ですか?
川上 半自伝的ではなく自伝ですね。いろんな登場人物を映画的に濃縮させ、AV業界やストリップ業界で見てきた10年間を書いています。
――大作ですね。
川上 ひとりの人間としての葛藤が書かれていて、いままでは意地のポジティブさがあったんですけど、いまとなっては意地ではなく、心から自信を持ってポジティブになれたんです。たくさんいろんなことが書いてありますけど、私が職業としてきたセックスをいい意味でも悪い意味でも考えた内容になっています。私の中ではハッピーエンドの内容だと思っています。
――それはリアルな世界でもアダルト業界からハッピーエンドで卒業できるからですか?
川上 そうです。現実とリンクしています。
――小説も読んで、写真集と写真展もまとめて見た方がいいですね。最後に写真集と写真展をどう見て欲しいのか教えてください。
川上 女性にも見てもらったら面白いかもしれないですし、セックスを扱う職業の方たちに見てもらったら希望が持てるかもしれないです。あとは協調性や体裁を大事にしすぎて、どこか息苦しいところから自分を変えたいという人にもなにか届くものになっているんじゃないかと思います。
――小説や写真から希望が見えますか?
川上 小説のタイトルが『決めたのは全部、私だった』なんです。自分で決めたり、決めて失敗して責任を追ったりすることは怖いと思うんです。でも、なにかを変えたい人はいるので、自分で決めて行動してもいいのかなと思います。人生は自分次第でどうにでもなります。
――素晴らしい考えです。写真集と写真展のタイトルも『すべて光』と明るいですね。
川上 くまこさんの視点がすべてに入っているから、そのタイトルになったと思います。くまこさんは私を見て、『すべて光』に見えたそうです。
――写真は光と影の化学反応ですが、熊谷さんから見た川上さんは「光」なんですね。
川上 私自身はコントラスト(光や強弱の対比)なんですけど、くまこさんはそれさえもすべてが光に見えたそうです。
――他人からそう見られるのは最高ですよ。
川上 暗さがあっても、違う人からは光に見えるし、自分次第で光に変えられるんです。
――その言葉はすごくいいですね。自分次第で暗い場所も光になりますからね。まさに川上さんの今後の未来を予見しているタイトルです。
川上 ぜひ、見に来てください。2023年には川上なな実ドキュメンタリー映画『裸を脱いだ私』もあります。こちらもすべての人に見てほしいです。
・写真展「すべて光」1月2日~16日 渋谷ヒカリエ&BARダイトカイの二会場開催
・写真集「すべて光」、自伝小説「決めたのは全部、私だった」1月12日発売写真集予約サイトhttps://www.amazon.co.jp/dp/4991158141/
・浅草ロック座引退公演「ファイナルストリップツアー」2月1日~28日
・川上なな実ドキュメンタリー映画「裸を脱いだ私」2023年公開予定
(インタビュー:神楽坂文人 インタビュー協力:マインズ 写真提供:熊谷直子)