下町でみつけたマット洗体エステ
「洗体エステ」って、覚えているだろうか。10年以上前に瞬間的に大流行したけど、今ではあまり見かけなくなってしまった。
女のコが水着姿でモコモコの泡を使い、全身をマッサージするように洗ってくれるあれ。
風俗のようで風俗でない。つまり、抜かないってこと。
今大人気のメンズエステもその口だが、洗体エステが衰退した理由は、「そこまでやるなら風俗行くわ」と、客も女の子も思ったからかも。
コロナがくる前、その洗体マッサージを、下町・小岩のはずれで見つけた。看板には、『マット洗体エステ』なんて書いてある。
マットで洗体って、ソープランドのマットプレイみたいなことしてくれるってこと?
興味津々だった。
どんなことをしてくれて、どんな女の子がいるのか、それだけでも確かめようと店に入ってみることにした。
エステがあったのはラブホの隣にあるスナックビルの一室。斬新な店だと思ったが、入ってみると既視感を感じた。
(その辺にある大陸エステじゃね?)
中華っぽいというか、韓流っぽいというか、内装や家具が大陸エステでよく見かける、ラタンのテーブルセットに花柄のテーブルクロスって感じなのだ。
すると、
「イラシャイマセー」
と、現れたのは、韓国人と思しき六十路のママだった。
オレ「女のコはナニ人なの?」
ママ「韓国人デスヨ~。韓国ノ女ノコ好キデスカ?」
オレ「好き…かな」
他に客のいない受付兼待合室で、ママはシステムを説明してくれる。
サービスは60分1万4000円からで、マットコースは70分1万6000円から。大陸エステでこの料金はけっこう高めだが、まず間違いなく〝アリ〟だろう。
「今ナラ3000円サービスシマスヨ~」
さらにママは言った。
「一番若イ子、空イテルヨ」
「若いコ? 何歳? 写真ある?」
マットコースを薦めるママに、アルバムを見せてもらったのだが…。
韓国人なのに香港人みたいな丸顔で、スタイルもくびれはないっぽい。他の女のコも特筆すべき美女はおらず、ただ〝一番若い〟というだけだ。
が、一番恐ろしかったのは、「システムと女のコを調べるだけ」という理由で入ったはずなのに、いつの間にか「遊ぶ」ことになっていたこと。流れというのは恐ろしいものだ…。
生肌の柔らかさと温もりにほだされて
エステ用のベッドが置かれた狭い個室で待っていると、すぐに現れたのは、写真と同じ顔の女のコだった。体にバスタオルを巻いている。
「コンバンワ、ハナデス」
ハナは日本語はうまい。が、長い髪の毛を丸い顔の頭の上でオダンゴにしているため、雪だるまみたいなシルエットになっていて、色気は微塵も感じなかった(泣)。
部屋で服を脱いで裸になり、腰にバスタオルを巻くと別の部屋に案内してくれた。
シャワールームだと思った場所は、実はプレイルームで、床一面にシルバーのマットが敷かれてる。
(なるほど、ここでスルわけか)
そう思ったとき、少し恥ずかしそうにバスタオルを取ったハナの身体は、ホントに恥ずかしいスタイルだった。
寸胴でおっぱいも小さければクビレもない。しかし、驚いたのは、水着かと思ったら全裸だった。アンダーヘアもボウボウだった。
筆者も、恥ずかしさでは負けてない中年体型で、マットにうつ伏せになる。ハナはまず、シャワーで身体を温めてくれた。思えば、これが一番気持ちよかった。
お互いに全裸のマット洗体が始まった。
ふくらはぎ、太腿、腰、背中、肩と、ひととおりマッサージするように素手で洗ってくれるが、マットの上で力が入らないせいか、それほど気持よくはない。
それより、全裸の肌と肌のからみつきの方が断然気持ちいい。ハナは、両脚で筆者の太ももを挟み込み、上下にスライドする。
すると、温もりとともに、ジョリジョリしたアノ感触が伝わってくる。もはや完全にソープかマットヘルスじゃないか!?
となると、いくらおっぱいもクビレもない恥ずかしい体でも、筆者の股間は自動的に準備を整え始めてしまう。それを察知したのか、ハナの手もそこに加わってきた。
やがてハナは、どこからかゴムを取り出し、スルッと装着すると、パクッと咥えたのだ!
「なんだゴムフ︎ラじゃん」と、勘違いしてはいけない。ここは〝洗体エステ〟だ。
しかし、完全に筆者の準備が整ったのに、ハナは手を上下するだけ。
(ハハーン、焦らしてるつもりか、ういやつめ)
そう思い、こちらから誘ってみた。
「入れようよ」
するとハナは、予想外の言葉を言った。
「本番、シナイヨ」
…ハイ?
「なんでしないの?」
「ナイカラシナイノ」
全裸で泡まみれで体を絡ませ合い、ゴムまで装着したのに?
そう、ここは洗体エステ。バーで知り合った美女が、マスク取ったら顔の下半分笑っちゃうくらいブスだったときと同じくらいガックリな瞬間だった。
何度かリピートして仲良くなれば…
ハナはふてくされ気味で、無言のヌルヌル、コキコキを続ける。
(こうなったら、意地でも手コキなんかでイッてやるもんか)
アッタマきてそう思っていた、だけど…。
密着して絡むハナの体の柔らかさと温もり、感触は予想外に気持よく、こわばった心までほぐしていく。
(あっ、もうダメ)
その瞬間、彼女を強く抱きしめながら、リビドーが解放された…。
「気持ヨカッタ?」
「うん、ハァハァ。でも、本番したかった」
「ダ~メ~」
個室に戻って仕上げのマッサージをしてくれるのかと思ったらそのまま終了。ハナが持ってきてくれた温かい麦茶がめちゃくちゃ美味しかった。
「アリガトウゴザイマシタ」
ハナはそう言ったが、AIより気持ちがこもっていなかった。
「気持チヨカッタデスカ?」
受付の場所で六十路ママが聞いてきたので逆に聞いてみた。
「本番じゃないんだね?」
「ウチ本番ナイデス。ゴメナサイネ」
マジか。あの状況ならあっても然りなんだけど。
「デモ、何回カ来テ、仲良クナレバネ……」
なるほど! てことは、愛想のなかったハナもひょっとして…。
「デモアノ子、明日韓国帰ルヨ」
「なんじゃそりゃ!?」
店を出て時計を見たら、20分近くも時短されていてまた驚いた。
(写真・文/松本雷太)
執筆歴22年、風俗ライター、風俗史研究家。