淫靡だがどこか猥雑な魅力を放つ昭和ストリップ。その内実を知るストリップ劇場芸人・松本格子戸がその舞台裏を語る連載コラム!
今は亡き西日本のストリップ劇場
◯心霊現象が多発したホラーな劇場
【ナニワミュージック】まさに関西ストリップの歴史といっても決して過言ではない劇場。天神橋筋六丁目にあり、1階が劇場、2階が楽屋なのですが、とにかく階段が急で、よく誰もコケないなぁと感心していました。楽屋がある2階には、開かずの間があったり、夜中に誰もいない舞台で顔のない踊り子が踊っていたのを見たとか、従業員が回転盆のを修理中に誤って巻き込まれて亡くなったとか、なかなかホラーチックな劇場でもありました。現在は駐車場になってます。
【堺ミュージック】刃物の町としても有名な大阪府堺市の宿院にありました。外人の踊り子さんや白黒ショーのお兄さんお姐さんが多く、賑やかな劇場でした。場内にトイレがあって、開催中でも常に臭かったのを思い出します。ここも現在は駐車場に。
【和歌山八光ミュージック】僕が初舞台を踏んだ思い出深い劇場です。和歌山市の中心部からちょっと離れた場所にあり、周りは飲み屋や住宅もあるような立地。平日と日曜日は1日4回公演でしたが、土曜日は1日5回公演で午前1時までやってました。土曜日のお客様が多く、地元の若いお兄さんたちが酔っぱらって大挙して遊びに来られまして、平日の閑散さと土曜日の大盛り上がりのギャップが凄い劇場でもありました。閉館後はしばらく放置されておりましたが、解体されて現在はマンションが建っております。
【奈良スターミュージック】日本有数の観光地である奈良公園のそばにあり、先ほどの和歌山八光ミュージックとは兄弟館でした。僕は奈良スターミュージックで専属コメディアンとして毎日舞台に立たせて頂き、漫談やひとりコントを演じておりました。最終的にはガサ入れからの営業停止で閉館に。奈良スターミュージックの最後の舞台に立っていたのは、他でもなく僕、松本格子戸です! 現在は何と、グランドピアノがあるギャラリーバーになってます。若手アーティストの表現の場として営業しているなんて不思議な感じですね。バーのオーナーさんはこの場所にストリップ劇場があったことすら知らなかったようですが、ストリップ劇場もギャラリーバーも「表現の場」ですから。
◯温泉場の劇場では酔った客が大騒ぎ
【湯郷東洋ショー劇場】岡山県の湯郷温泉にありました。温泉場にある劇場となると、お客様は「旅の恥は掻き捨て」と言わんばかりに酔っぱらって、浴衣姿で大挙してご来場。場内で騒ぎまくって、ただただやかましいばかりというのが常。この湯郷東洋ショー劇場もご多分に漏れずでした。現在も劇場の建物は残っているようですが、使われてはおりません。
【湯原観光劇場】こちらも同じく岡山県にありましたが、現在では廃墟マニアのレアスポットとして有名な劇場跡ですね。今でも「明日からも営業できるんじゃないの?」と思うほど、外観も場内も舞台もしっかり残っているのです。僕は昔々に一度だけ出演させて頂きましたが、やはりあまりにうるさくて、記憶に残ってませんね(笑)
【神戸新劇ゴールド】阪神大震災の犠牲になって、閉館を余儀なくされました。西の浅草と呼ばれた神戸新開地にあった劇場で、周りは映画館や寄席、大衆演劇の芝居小屋やストリップ劇場が立ち並ぶ一大興行街でした。もちろん今も名残はありますが、二軒あったストリップ劇場も今は両方ともなくなって、寂しい限りです。