主人公の気持ちが変わる瞬間はカットを割らない方がいいんだなって
—— では、お次は「ワンシーン・ワンカット」について教えて下さい。
朝霧流AV演出② ワンシーン・ワンカット
登場人物の関係性が変化する重要なシーンでは、あえてカットを割らずにワンカットで勝負する。リハは何度も行う。セリフは間違っても構わない、気持ちが途切れない事が重要と女優に伝える。スタッフにも演者にも独特の緊張感が生まれ、それは画面にも現れる。 pic.twitter.com/ynBzJ3d3iX— 朝霧浄(AV監督) (@asagirijoe) September 28, 2020
朝霧 元々、AVのドラマモノって細かくカットを割ることが多かったんですね。その方がドラマっぽいしセリフも修正できるし。もちろん僕も今でもその手法を使います。でも主人公の気持ちが変わる瞬間はカットを割らない方がいいんだなって「3日間シリーズ」の川上さんや枢木さんを見て思いました。
朝霧 正直この〝ワンシーン・ワンカット〟は「AV女優ってスゲエ!」の一言に尽きます。実力のあるAV女優さんは「普通の役者さんより演技いけるんちゃう?」っていうくらいにお芝居が上手いんですよ。なので、できる女優さんには全部任せていいと思ってやっています。
こちらがカメラを動かさなくなると、女優さんたちがその世界でちゃんと動くようになるんです。枢木さんにしても川上さんにしても、こちらがカットをかけるまでしっかり動いてくれるので「放っておいていいな、むしろ邪魔しないほうがいいな」と思い、この〝ワンシーン・ワンカット〟ができました。
朝霧 いつのころからか、この業界で監督をするというのは、「いかに女優さんの魅力を引き出してあげるか」ということが勝負だと気が付いて。「自分が何かを作っていると、思わない方がいい」と、思うようになりました。
監督が演技やセリフを付けすぎるから、「言わされてる感」が出ちゃうんですよね。僕は必ず、「この場面、自分だったらどうする?」と女優さんに聞いて、それを一番に採用します。こちらが考えることより、女優さんが考えたことの方が演じている女の子に近いですからね。あえてセリフは付けずに「5分あげるから男の子誘ってみて?」みたいな感じでやってもらいます。すると、お芝居臭さが抜けてリアリティが生まれるんです。
作品自体は役者が作るものだと思っているので、「それを邪魔しないように作る」みたいなことを考えてやっています。