川上 デビューしてどのくらい経った?
八木 今年の12月で2年です。
川上 デビューしてから達成できた何かはあるかな?
八木 この業界は正解がないし、得意だった予習は活かせません。どんなに(性)経験がある方でも、経験がない方でも予習ができない世界だと毎回思っているんです。最初は本当にちょっとしたことで辞めたい、逃げたい気持ちになっていましたし、逃げたい理由を探して正当化していましたけど、この世界を選択したのは自らの意思だったので・・・。
川上 この世界を選択したきっかけは何かな?
八木 きっかけはいろんな感情と複数の環境が重なっていたので全てを説明するのは難しいですが、自分から事務所にメールをして応募しました。実は家族に小さい頃からずっと期待されていて、何かを自ら選択できることはない環境で育ってきたので、この世界に入る時は誰にも伝えずに応募しました。
川上 そうすると逃げ場がどこにもなかった?
八木 そうですね。それが当たり前だったので逃げたいという気持ちもありませんでした。いまだに家族には敬語で話しています。いまは仲もすごくいいんですけどやっぱり気を張ってしまいます。
川上 いまは甘えられる人はいるの?
八木 う~ん・・・、いないです。
川上 甘え方は分かるのかな?
八木 実はずっとそれで悩んでいて、甘えることはすごくハードルが高いというか、昔から一人でなんでもできる子、反抗期もない子と言われてきたので、私はそういう自分でいないといけないって思ってしまっているんです。授業参観など学校のお知らせを渡す時は否定の言葉を聞きたくなくて「この日は来られないですよね?」って伝え方をするんです。
正直、事務所のマネージャーさんにもプライベートなことは話せないし、仕事の移動中も本音では全く話せていないんです。何故かと言えば、この仕事で悩んでいる時にいま周りにいる方にポロっと悩みを話したら「そういうものだよ」って言われたんです。
川上 私も言われたことある! 超ムカついて殴りたくなった。ははは(笑)。「お前も女優をやってみろよ」って(笑)。
八木 「それが普通だから」、「でも、八木ちゃんは恵まれてる方だよ」って言われ方をされた時に何も言い返せなくて、相談してしまったことを後悔して、そこから怖くなって言えなくなったんです。
川上 私は一回言ってダメだと思っても言葉が出ちゃうの。いやな思いをしても言葉が出ちゃう人だから、すごい何回もぶつかって、ぶつかって、ぶつかりまくって折り合いをつけた。
八木 すごい。
川上 だから、そういうことをやってみてもいいのかなって思う。
八木 確かに。
川上 「言ってはいけないんじゃないかな」っていう言葉をあえて出す必要性はこれからあるんじゃないかな。それは私に対してでもいいよ。いまの自分を変えたい思いはあるよね?
八木 はい。
川上 すごくある感じがするので、そこから始めていくのがすごく重要かもしれない。自分が苦しくなるくらいなら、トライすることをやめないでほしい。一人で抱える問題になるくらいなら人を巻き込んでいいと思う。エンタメにかかわる仕事をしているんだから、人を巻き込むべきだと思う。言った後は後悔するしストレスになるけど、次に言ったらこの人はどういう反応をするんだろうって面白がった方がいいよ。
まずは自己肯定感を上げて、悲しい言葉を言ってくる人に対しては「悲しいな、もったいないな、でもその人のペースだからな・・・」って思うような人になって。私はそれをするようにして楽になったの。自分の悪いところを受け入れて、自分を好きになって肯定し、自分に自信を持つところから始めないといけないなと思ってたの。
八木 私は自分の発言や行動を許して自由にすることがすごく難しく感じているんです。仕事でもプライベートでも人と会話をする時に二つ先まで考えて、「今日はこの人に会うからこういう自分でいよう」って、一人一人に対して自分を変えちゃうんです。
川上 その根底にあるのは自分が完璧でいないとならないからかな?
八木 それもありますし、無意識に大きな壁を作ってしまうんです。でも、誰かに「いまこういうことがツラい」ってポロっと本音を言えたら、自分がすごく変わるんだろうなって思っています。でも、言えないんです・・・。
川上 他人からどう見られてもいいって思えるかな?
八木 思えないです。すごく気にしてしまいます。
川上 この人にならどう見られてもいいいやっていう幅を広くしていくと、自分が想像しているよりもびっくりする場所に行けるよ。
八木 すごく説得力があります。
川上 人の労力って限られているじゃん。この仕事をしているといろんな人に出会うでしょ。イベントにもいろんな人が来て、最初は私もファン全員の言葉を真正面から受けて、真正面から返してあげていたのね。でも、それは苦しかった。
私は上昇志向が強かったから、有名になり実力をつけていい仕事を取ることを優先させた。それをするためには言われたくない言葉を言われても、スルーできるようにした。それに対していら立つ自分が悪いと思い、それに対してどうユーモアで返すかを学んだ。
例えば飲み会で「AV女優をやっているの? 俺とセックスしようよ」って言われたら、「私、高いですよ~」って返して、相手もあまりいやがらないユーモアを交えた返し方をしたの。そこでキレたら負けだと思ったから。私はみんなのセックスシンボルだから、そう言われて嬉しいって思うようにしてサービス精神で返したんだ。
性の対象として見られることがすごく大嫌いだし、裸を見られるのが苦手だけど、そのままだったらやっていけないと思い、AV女優になったんだから、そういう言葉を言う人たちにはAV女優になりきってあげたの。
そうしていれば「よく耐えていたね」って私の対応を見ている周りの人たちと、またタイミングがあえば会えて愛をくれるから手を抜かないでいて。見ている人たちは見ているから。
八木 結果としていま川上さんは愛をくれる人と出会うことができたと思うんですけど、もちろん出会うまでは気づけないじゃないですか。それでもいい出会いが先にあるかもしれないって思い続けてこれたんですか?
川上 私はその時には気づけないけど、ずっと希望を持っていたよ。
八木 それが本当にすごいです。
川上 だから、「何言ってるの漫画みたいなことを」ってすごく笑われたよ。でも、聞いている人は聞いているから言葉に出していくと叶うの。だから、バカって思われても嬉しいくらいだから(笑)。バカになるのはかみしお(神咲詩織さん)に教えてもらったかな。
八木 勇気がいることですよね。
川上 そうだけど、バカになったもん勝ちだよ(笑)。
八木 本当の気持ちを言葉にするってすごく大事ですね。
インタビュー中編は明日公開!!