──最後の「映画をやりたいです」という言葉を監督は想定していましたか?
佐近 想定していなくて「今後、何をやりたいですか?」って聞いたときに、すごい最高の表情で「映画をやりたい」って言ってくれて、ここで初めてこの言葉をもってして映画が完成したなという手応えを感じたインタビューでした。
川上 自分のことを言っているので、あまり自分で「見てください!」、「すごいいいんです!」って言えなかったので、周りから「良かったよ」って言ってもらえて、「そうなのかあ」といまやっとなっている感じです。
──この映画を見て改めて自分がやっていきたいものは何ですか?
川上 映画です! 面白いものを作っていきたいです。表現者でいたいというのがあります。
──それだけ映画には魔力がありましたか?
川上 ありましたよ! 映画はめちゃくちゃ魔力があります。パワーがあります。
世界にも通じるようなパワーがあるから、映画はやっぱりいいなって思うし、AV業界もニュースではいろいろ言われていますが、この映画のなかでインタビューを受けている時はAV業界に関して複雑な気持ちもありました。
でも、さっき映画を改めて見ていいところも悪いところもいろんな世界にあるじゃないですか、そこも踏まえたうえでAV業界って改めて好きだってなって。
AV業界ってクリーンでめちゃくちゃ楽しい世界だよっていうことを広めていきたいなって思ったから、映画もやりたいし、AV業界もずっと関わっていきたいなって思いました。
すごい贅沢な話ですけど。イタリアでそれを言ったら「無理だよ、そんなこと出来ないよ」って言われたけど、出来ないって言われるものほど燃えるので両方やっていきたいです。いいところをもっとアピールしていきたい。
──いまの川上さんの決意を聞いて川上さんはこれから女優になれると思いますか?
佐近 僕は思ってますね! この作品で何をやりたかったかと言うと誰かを演じるというお芝居には共通しているものがあって、アダルト出身だから映画に通用しない芝居であるってことの根拠にはならない。
川上さんの演じること、表現することは映画でもアダルトでも垣根なしに魅力が伝わるきっかけになればいいなと思ってます。
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2人とも上映後の興奮が冷めない熱量でインタビューに答えてくれ、今後の川上奈々美ちゃんの未来が見えたインタビューでした。
その後、川上奈々美ちゃんと佐近圭太郎監督は大観衆の中、堂々と舞台挨拶に立ち、映画の魅力、アダルト業界の魅力などを語り、盛大な拍手を受けていました。
今回の映画祭をきっかけに川上奈々美ちゃんを知った方も多いと思われますが、アダルト業界と映画界、果ては世間を繋ぐ役目としては、自分の言葉をしっかり持ち、堂々としたスピーチが出来る彼女こそ最適の女優ではないでしょうか。
ややもすれば偏見で見られがちなアダルト業界ですが、川上奈々美という女優の演技力が、その偏見を打ち破るきっかけを作った映画と映画祭であったことは確かです。
今後もアダルトでも、映画でも川上奈々美ちゃんの演技と活躍に期待したいです。
【映画『女優 川上奈々美』のメインテーマ曲『抽象的な朝』】
(写真・インタビュー KKフォトグラフ)