『葵つかさ 生きる。』写真展レポート!
「30歳で死ぬと思っていた」──
そう語った覚悟から始まった、ひとりの女性の表現の軌跡。
2021年に発売され、気づけば伝説となっていた写真集『葵つかさ』。あの一冊が、未公開カットと新たな撮り下ろしを携え、『葵つかさ〈完全版〉』としてこの夏、蘇る。
そして8月20日に発売される、4年ぶりとなる完全新作写真集『生きる。』。すべては、彼女の“いま”を写し出すためにある。
けれど、それだけでは届かない想いがある。ページをめくるだけでは伝えきれない、息遣いや、眼差しの熱、その場の温度がある。だからこそ実現した初にして最後の写真展『葵つかさ 生きる。』。
一枚の写真の中に、過去も、痛みも、愛も、決意も、生も宿る。
紙面越しではなく、手に触れられる距離で、息をのむほど繊細で、心を射抜くような眼差しと対峙する時間をこの夏、ぜひあなたの身体ごと受けとめてほしい。
これは、彼女が確かに“生きた”という証に立ち会う、ただ一度の機会なのだ。
葵つかさ写真集 生きる。
今回は撮影をした写真家の西田幸樹氏、後輩女優の藤かんなさん、つばさ舞さん、事務所社長、そして、葵つかささん本人に話を聞いた。
■西田幸樹の証言(写真家)
彼女は、不思議な被写体でした。「何かを抱えているな」という印象を受けましたね。
写真に写っているものだけではない“何か”が感じられるというか。
初めての撮影は10年以上前でしたが、その時にスタイリストさんやヘアメイクさんが、
「ちょっとあの子、ヤバいよ」と言っていたんです。「ヤバい」というのは、いろんな意味でということです。
今回の引退は、一つの区切りではありますが、共有した時間はとても貴重なもので、それがなくなるわけではありません。作品も、ちゃんと残っていきます。今回展示したものも、これだけしっかりと残っている。だから、みんなの気持ちの中で、彼女はこれからも生き続けてくれるでしょう。
この写真展では、作品を見てください。そこに、僕の言葉が入っています。
■藤かんなの証言(後輩女優)
15年間という蓄積があっての“今”なんだろうなと思います。
つかささんが、どんな気持ちでこれまでの日々を過ごしてきたのか。むしろ、私のほうが、それを聞いてみたいです。語りきれないような想いが、きっとたくさんあるのだろうと思います。
そもそも、なぜ引退を決めたのか。そういったことも聞いてみたいと思ってしまいます。だから、私の中ではまだまだ、わからないことだらけなんです。
つかささんに初めてお会いしたのは、2022年の「8woman」です。エイトマンという事務所を社長と一緒にずっと作り上げてきた存在だと聞いていました。
15年間、AV女優という仕事をやり続けてこられたことは、本当に素晴らしいことだと思います。その経験は、何ものにも代えがたい大きな財産だと思いますし、そのすべてを糧にして、これから新しい世界でも幸せになってほしいです。
■つばさ舞の証言(後輩女優)
初めてつかささんと出会ったのは、「8woman」の2年目のときでした。私がデビューする前から、つかささんの存在は知っていて、実際にお会いしたときの印象は、「圧倒的な人だな」と思いました。他人を気にせず、凛と立っている、その姿がとても印象的でした。
私が勝手に抱いていたAV女優のイメージとは、まるで違っていました。つかささんには、触れたら壊れてしまいそうな儚さもあって、いろいろなものを兼ね備えていて、一言では言い表せないような存在感がありました。
3年目の「8woman」で、グラビアを一緒に撮らせていただいたとき、つかささんの近くにいさせてもらえたことが、本当に嬉しかったです。今になって思えば、「もっと見ておきたかったな」というのが正直な気持ちです。
今回の写真展を見て、最初に浮かんできた言葉は「圧倒的」でした。本当にそれしか出てこなかったです。つかささんだからこそできた表現だと思います。10年以上にわたって戦い続けてきたものが、そのまま写真展に現れていました。だからこそ、引退すると聞いたときは、「まさか」と思いました。本当に驚きました。
まだまだ、その背中を見ていたかったですし、私はつかささんのことを尊敬しているので、本音を言えば、やっぱり引退してほしくなかったという気持ちがあります。
でも、つかささん自身の幸せが何よりも大事だと思いますし、どこに行っても、つかささんは“圧倒的な存在”であり続けるはずです。だから今は、「お身体を大切にしてください」という、その一言しか言えません。
写真展の中で、特に印象に残ったのは、笑っているカットです。実は、私の中では、つかささんってあまり笑顔のイメージがなかったんです。どちらかというと、クールな表情が多い印象だったので。でも、この写真(↑掲載写真参照)はとても自然な笑顔で、すごく心に残りました。
■事務所社長の証言
葵つかさが18歳からですもんね。
だから、いなくなるっていうのは……、ちょっと想像できないですよね。
私も、まだ現実味がないですし、本人自身も、引退の実感はまだ湧いていないと思います。
「何者でもない存在」から、「葵つかさ」という名前を捨てる。それって、本当に大きな勇気がいることだと思うんです。彼女自身、「葵つかさがいなくなるのが一番怖い」って言っていて、その次に怖いのが僕だ、っていうくらいの感覚でした。
彼女が「30歳で死ぬ」って言ったときに、「じゃあ、西田(幸樹)さんに撮ってもらって、死ぬか」っていう話になって、初めて僕のほうから西田さんに連絡したんです。
そこからの流れで、ずっと写真展が続いている。だから、やっぱり彼女がすべてを作った人なんですよね。
■葵つかさラストメッセージ
「生きる」とは、「死ぬ」とは……ですか。
一言で言います。
「生きる」とは、「執着」。
「死ぬ」とは、「執着からの解放」。
今回の写真展は、所狭しと「葵つかさ」が展示されています。同じ時代を一緒に生きた人たちと共に、この空間を過ごせたら幸せです。
こんなにも泣いたり、悲しんだり、喜んだり、執着したり。そんな15年間だったので、本当に「生きたな」っていう気持ちで、今はいっぱいです。
誰しもの心の中にある「執着」「生きる」「死ぬ」という気持ちを、誰よりも体現できたのではないかと思います。
死にたいと思う感情に傾きかけていたとしても、それでも「生きたい」という感情に寄り添える写真展になれていたらいいなと思います。
そして、独りじゃないっていうことを、みなさんに感じてほしいと思います。
■葵つかさ写真展HP:
(写真・取材 神楽坂文人)