毎月、大好評をいただいている当連載もいよいよカウント3となり、終盤へと差し掛かりました。
今回、川上奈々美ちゃんはアダルト業界の大先輩である蒼井そらさんと、デビュー以来アダルト業界の同じ歴史を見てきた古川いおりちゃんを指名。恵比寿マスカッツとAV現場の違いや、AV女優の引退後の生活などを話され2時間30分ものロング座談会となりました。
しかも、3人での座談会となった理由が奈々美ちゃん自身から明かされるハプニングもあり、大いに盛り上がった回となりました。まずは全3回の「前編」をご覧ください!
【川上パイセンカウントダウン対談3・前編!!
川上奈々美(以下、川上) 今回はいきなり人生グラフから見ていくね。「ハッピーならそれでいい!! そう言って死ぬ」って書いてあるけど、こっちゃん(古川いおり)のハッピーとはどういうことかな?
古川いおり(以下、古川) プラスマイナス全部ひっくるめて、「私らしい、いい人生だったな」って笑顔で思いたいの。
川上 ほおお! 悔いがない人生がハッピーなのかな?
古川 そうだね。私の中ではAVデビューしたのも、恵比寿マスカッツに入ったのも、恵比寿マスカッツを卒業したのも、いまいるこの空間も人生の経験値でしかないと思っているから。
川上 はい、はい、はい。
古川 いま、めちゃくちゃ真面目なことを話して自分で偉いなぁと思っちゃった(笑)。
川上 そういう座談会だから大丈夫(笑)。
古川 経験値を利用して楽しかった人生と思いたいの。
川上 これからどういう自分になりたいとか願望はある? 強い女性とか、いいママになるとか?
古川 人間らしい自分でいたい。
川上 その言葉が出るのはビックリだな。
古川 ここ2年くらいで変わったの。恵比寿マスカッツを卒業してからいろいろあって。実はスタッフさんの熱量と自分の熱量との違いをずっと感じていたの。
川上 どこのスタッフさん?
古川 ソフト・オン・デマンド(以下、SOD)のスタッフさんと恵比寿マスカッツのスタッフさんの熱量が全然違っていて、その違いについていけなくなっちゃったんです。
蒼井そら(以下、蒼井) どっちがいいとかではなくて?
古川 恵比寿マスカッツで時間を費やし過ぎていたから、そのレベルが普通になったんです。SODはどちらかというとゆっくりなテンポで進んでいくスタッフさんだから、私は「こっちはもっとこうした方がステキになるはずなのに、なんでこんなことをするんだろう」って思いがあって、常にイライラしちゃう状態になっていました。
川上 それは意外! SODさんもそういうところがあるんだ?
古川 結構昔から。あと新卒社員さんが入ってきて、すごく気を遣われるようになったんだけど、私は気を遣われるのはイヤで、逆にピリピリした空気をずっと出しちゃってたの。
川上 メーカーは女優ありきだから、みんなすごく気を遣ってくれるんですよね。それが行き過ぎて、目的を忘れた気遣いに「ん?」ってなる時はあるよね。
古川 そうなんです。
蒼井 恵比寿マスカッツもそうだけど、AV以外の現場は「平(ひら)」でいるじゃない。AVの撮影現場は自分が「姫」だと思ってやっていたから、私はそういう人になろうと思ってやっていた。「わがままでいいや」と思っていた。
川上&古川 へ~!
蒼井 香盤表には一カラミの時間を2、3時間取っているんだけど、ほぼ休憩にしてた(笑)。
川上 楽屋からなかなか出てこない女優ですか。あはは(笑)。
蒼井 楽屋でゲームをしながら「どうしようかな」って思っていると、スタッフさんが「そろそろ…」って言うから、「じゃあ、行きますか」って撮影に向かう感じだった(笑)。
川上 そう考えると恵比寿マスカッツとの温度って全然違いますよね。
蒼井 全然違った。
川上 それは意識的に変えていたんですか?
蒼井 うん、変えていたし、そうしていいものだとも思っていた。「気を遣え」って思ってた(笑)。
古川 私はそらさんのようにする勇気がなかったので、どこでもある程度評価が下がらないようにやろうとしていました。気を遣うので八方美人とは言いたくないけど、その要素が自分の中に入っているんです。それをAVでも恵比寿マスカッツの現場でもやろうとして精神的にガタガタになったのが、この人生グラフの一番どん底です。恵比寿マスカッツを辞めて半年くらいで起こったんです。
川上 恵比寿マスカッツを卒業するとそんな現象が起こったんだね(笑)。
古川 恵比寿マスカッツにいるときは「ダンスを覚えないと」とか、「リハーサルがある」とか時間をマスカッツに注いでいたの。でも、辞めた瞬間、SODしかなくなったからすごくしんどかった。
川上 マスカッツで出していたアドレナリンを出す場がなくなった?
古川 3年しかいなかったけど、その期間があまりにも濃すぎたから洗脳されちゃったみたいな感覚でした。恵比寿マスカッツで覚えたやり方と、SODで長年培ったやり方が交わらなくて、とりあえず自分を殺そうと思ったの。
川上 殺したの! どうして辛い方に行くの(笑)。
古川 カメラが回ると助かったんですけど、回るまでが大変だった。
川上 その感情をどうやって抜け出したの?
古川 いい意味でも悪い意味でもあきらめた。対応するには自分が言っていいところとダメなところを線引きした。
川上 ビジネスライクな考え方も取り入れたんだ。いまは人生グラフみたいに上がっている状態かな?
古川 楽になり、やっと馴染んできたかなって感じです。