川上 そらさんはマスカッツを辞めてから抜け殻みたいになりましたか?
蒼井 最後はマスカッツにいるのがしんどい時があったの。
川上 私は解散ライブをDVDで観たんですけど、「辞めたい時は何回もあった」っておっしゃっていましたよね。あの言葉が忘れられないんです。
蒼井 何回もあるし、やっと終わったと思った。
川上 それは達成感ですか?
蒼井 達成感だね。それとみんなが終わりを迎えるところまでいられた気持ちが大きいかな。解散の半年前に他の仕事でいろいろあって精神的にしんどくなって、マスカッツでイジられることを本気で捉えちゃうようになったの。
川上 あります!
古川 ナイーブになりすぎちゃって。
蒼井 そう、そう。もう涙が止まらなくなったの。
川上 でも、プロデューサーのマッコイ斉藤さんは「やりきれ!」って言うんですか?
蒼井 「恵比寿マスカッツはお前がいなくなったらダメだから」ってマッコイさんが言ってくれて、「とりあえず半年頑張ります」ってなったの。
川上 それで楽になりましたか?
蒼井 楽にはならなかったけど、とりあえず半年は頑張りますって思ったし、終わりが見えていたから頑張れた。
川上 期間を決めないといろいろと辛いですよね。私、AV引退を決めた理由がなんとなく分かったんです。
蒼井 いままで分かってなかったんだ(笑)。
古川 なに? なに?
川上 コロナ禍になって時間ができたし、ファンの人とも会う機会がなくなったじゃないですか。私は目の前にいる人に流されたり、左右されたりして動いちゃうんです。コロナ禍前は月に3、4回イベントをやってファンと会っていたんです。それだけファンが身近でした。ファンはAVを観て応援してくれているじゃないですか。だから、「AVは続けなければ」っていう考えがあったんです。
私の中ではAVデビューしたきっかけも、続けていく意味も葛藤でしかなかったから、ファンと会えなくなって、自分一人になった時に、「あれ? 自分の幸せはなんだ?」って考えるようになったんです。俳優になりたかったので、それを叶えるためにはいまAV女優を辞めるって決めたんです。それを決めたうえでAVの撮影をするのは大変な部分もあるんですけどゴールが見えているからカウントダウンしているんです。あとは意地もあるのかなと。
蒼井 すぐに意地を張るからね(笑)。
川上 そうそう。ここまでやって来たから、華々しくみんなから「お疲れ様」って言われて、達成感がある状態で辞めたいから、恵比寿マスカッツは意地でもやる感じになっているんです。
こっちゃんは人生グラフに「辞めたくなった年に引退」って書いてあるけど、いまはAVの活動はどう?
古川 さっきもカメラが回ったら楽になるって言ったけど、まだAVの撮影自体は楽しいよ。いまAVの撮影だけが唯一楽しいかな。
蒼井 それ以外はどういう感じで仕事をやっていたの?
古川 人が無理ってなっちゃったんです。周りの人には迷惑をかけたくないから、ちゃんと仕事はするんですけどしんどい。私の唯一の救いはAVの撮影ってなったんです。
川上 「もっとこうしたらいいのにな」ってことでストレスになるよね?
古川 ストレスになるから考えなくなった。
川上 おお! クール! 冷静ですね。私も葛藤はあるよ。多分、この3人は奉仕精神が多い方で現状をよくしたいと思っちゃう方だと思うんです。相手に言ってみたけど変わらないから一人で「なんだよ…」ってなるタイプかなって思うんです。
古川 そうそうそう。
川上 そういう経験を私もしてきたんですが、そらさんはいかがですか?
蒼井 私も要領が悪いことはすごくイヤで、すごく言ってきた。
川上 せっかちですか?
蒼井 せっかちだと思う。「こことここのシーンは同じだから撮っちゃえばいいじゃん」って毎回言っていたし、要領が悪いところがあるといまでも言っちゃう。
川上 私は言い方を変える戦法にしているんです。
蒼井 そうだよね。私も明るく柔らかく言うよ(笑)。
川上 私は本当になにも言わない時期があったんです。でも、ポイントとなるところではボソボソからの「だよね~」、「じゃな~い」って言うんです。
蒼井&古川 怖い!
蒼井 怒っているんじゃないかなって周りは感じるよね。
川上 演者にとって人を動かすことって必要じゃないですか。それがいま一番の課題かな。
古川 感情にすぐ出ちゃうし、言葉にも乗っちゃうからねあなたは(笑)。
川上 でも、それって演者にとってはいいことでもあるじゃないですか?
古川 もちろん。
川上 それを理解していただきたいんですが難しい…。