── そういう意味でこの人生グラフを使って今後の人生を語ってもらいますか。グラフでは30歳手前くらいでAV女優引退になっていますが? ゴールは決めているんですか?
八木 決めていないです。その決断ってすごく難しいですよね。
川上 難しいよ。ズルズルズルってなる可能性があるから(笑)。
八木 グラフでは30歳手前で上がっていますけど、落ちるかもしれないし上がるかもしれないし、先は全く見えないです。
川上 AVを辞めるタイミングが一番難しいんだよ。
八木 はい。いつ辞めるかは分からないんですけど、辞める時はスパっと辞めようと思っています。ふわっと辞めるんじゃなくて、もう八木奈々はここでおしまいって感じで辞めたいです。
── グラフの現在地に「貯金。働かなくてもお金が入る仕組みを作っておく」と書いてありますが。これはどういうことですか?
八木 もともと貯金をすることは好きなんです。視覚的に達成感があるので。
川上 その貯金で何をしたいの?
八木 「八木奈々」を終えた後の人生に使いたいんです。働かなくても暮らせるような仕組みを考えるって書いてあるんですけど、その後も仕事はしていたいです。
川上 投資はしないの?
八木 いまのところそこは考えていないんです。将来的に思い描いている夢があって、そのためにはベースのお金が必要なんです。色々なことを学び、夢をかなえるためには、お金も時間もかかりますし、それに貯金はいくらあっても無駄にならないと思うので。
川上 学んだ先には何があるの?
八木 海外で療育活動をやろうと思っています。実際に行いたい活動や行きたい国も具体的に決めていて、10年後でも20年後でもいいから私の存在で一人でも多くの人を救いたいんです。
川上 そのことを話すのに、恥ずかしそうに話すのはどうして?
八木 アダルト業界の人に話してバカにされた経験があるからですかね。私はボランティア活動をいまでも色々としていて、私なりに療育の勉強もしていて、それを恥ずかしいと思ったことは一回もないんです。でも、この世界に入って「そんなのは偽善だ」っていう人たちにいっぱい出会ったんです。
川上 なるほどね。私の中で八木ちゃんにやってもらいたいことができた! 当事者でもないのにいろんなことを言う人が多いよ。AV女優も今は変わってきているでしょ。昔は一般社会で働けないからやっているとか、社会不適合者とかいろいろ言われていたけど、そうではない知識も夢も持っているAV女優も多いでしょ。
私も「ハリウッドに行きたい!」って言ったら、すごく笑われるよ。でも、夢は叶うの。だから、徐々に周りの認識を変えていけば何かが変わるはずだから、私はみんなに笑われてもハリウッドや海外で女優をやりたいって言ってきたの。
それが今は実際に現実的になっているから、そのお手伝いをしてほしい。目の前のことでいっぱいっぱいになっている人たちが多いからAV業界は世界が狭いように私は感じるの。今はそこを変えようとしている人も多いし、みんながみんなそうではなくなってきているのも確かだけど。
でも、目の前のことに追われていると幸せって掴めないし、どんどん悪い方向に行って、いい流れにならないわけよ。AV業界はもちろん、一般社会の人たちにも視野を広げてほしいの。
だから、八木ちゃんも「療育という形で支援をしていきたい」って堂々と言ってほしいの。それには膨大な資金が必要だから、いまはAV女優で人間としても勉強して、お金も稼いでいるってすごく素晴らしいことでしょ。
八木 はい。本当にそう思います。
川上 今のAV女優にそういう目的を持っている人はいないから、それを言うだけで一つのキャラクターができるの。もしかしたら偽善と言われるかもしれないけど、入り口はAV女優でもよくない?
八木 はい。それで言うとAV女優としてやりたいことはいくつかあるんです。
インタビュー後編は明日公開!