川上 加美ちゃんのことは分からないことが多すぎるの。
加美 ああ、私も自分のことを分かっているかっていうとそこまで考えていなくて、大きい部分はフワフワしているんです。「これ!」っていう部分が明確に分かれば、そこに行けるんです。いまはやりたいことが多すぎてフワフワしているから、自分で理想を言う時に「これじゃないとイヤ」っていう部分がないんです。
川上 いまの段階だったらいいと思う。やりたいことを話していけば明確にならざるを得ないところもあるし、なることもあるから。加美ちゃんは「あれをしたい、これをしたい」って言えない人だと思っていたの。
加美 結構、そうかもしれないです。
川上 でも、ここでは言えているよ。
加美 最近、ちょっとずつ自分の意思が出てきたのかもしれないです。
川上 それは考えるタイミングがあったの?
加美 この仕事を始めてからです。
川上 いまはスケジュール的に忙しい?
加美 その月によります。自分は忙しいのが好きみたいでスケジュールを詰めてくれた方が安心するんです。
川上 いろんな女優さんがいるからスケジュールが詰まっていた方が焦らなくてすむよね。デビュー1、2年目はAV業界のことも分からないし、一緒の時期にデビューした子もいっぱいいるからね。
加美 ライバルもどんどん出てきますから。
川上 忘れられちゃうんじゃないかとか思うけど、AV女優は長くやればやるほど名前が大きくなると私は思っているの。続けることが結果につながる職業だと思うし、続けることが一番難しい職業でもあると思う。毎月、体調管理をして撮影できるのは奇跡だと思う。契約も不安だし、そういう不安はいっぱいついてくるからね。
加美 いままで生きてきた中で不安にかられるっていう経験が初めてなんです。デビュー前はスーパーポジティブで、なにか起きても基本、悪いことやイヤなことは考えたことがありません。
川上 これまでなにか悪いことが起きたの?
加美 結構、クレイジーなことをしていたんです。
川上 なんだろう? 聞いてみようかな!
加美 スタイリストになりたかったんです。でも、スタイリストってアシスタントから始めるじゃないですか。私がつきたかった人は給料が3万しか出なくて。実家から出る貯蓄もなかったし、もともと新体操やジャズダンスをやっていたので、その経験を活かしてダンサーのバイトを始めました。バーレスクダンスみたいなところでバイトをしていたらハマってしまったんですけど、傍から見たら夜職なんです。だから親には反対されていました。
川上 厳しい親なの?
加美 そこまで厳しくはないんですけど、結構言ってはきました。三姉妹の真ん中なんですけど、やることなすこと反発したくなるタイプで、親に言われたことをしたくないタイプなんです。
川上 姉妹の中立を取るんじゃなくて?
加美 全然逆で、Aって言われたらBを取るんです(笑)。でも、自分で決めたからなにも言わないでっていう感じで。
川上 頑固だ。
加美 負けず嫌いなところもあるので、いろいろ言われても「黙っていて」って感じでした。それで親に「勝手にやれ」って言われた時があって、その時も「私の人生だし、親なんていなくてもいい」って思っていました。19、20歳の頃だから勢いがすごいじゃないですか。だから、勢いに任せて全部やってきたんです。でも、この業界に入ったら自分だけではなく、事務所もメーカーも関わってくるので責任感が生まれたんです。それで契約更新時になにもないのに家で泣き始めたことがありました。