そのままでいてください。私たちはこのままでいましょう。これがまとめですよ。私たちはこのままでいたいです(笑)
── お二人はAVも芸能もやっていますが、ストリップの高揚感は違いますか?
川上 全然、違う。
小向 全然、違う。生ものだからね。なんでも楽しいけどね。
川上 楽しさはなんでもあるんですけど、自分の中で合っている高揚感はストリップの世界だった。恵比寿マスカッツも大きいステージでライブをやったけど、なんか苦しかったんです。
小向 う~ん。
川上 なんか「アイドル」をやっているんですよね。というか自分から「やっちゃう」。
小向 やらなきゃいけないというか、周りがそうだからやっちゃうのかもね。競争してると、余計にそうなるからね。
川上 あ! それだ! 自分で楽しんでやってなかった。
小向 あと、みぃななは気い遣いだからね。「引っ張っていってあげないと」っていう意識が出てくるでしょ(笑)。
川上 まさに、それ(笑)。
小向 「ここ大丈夫かな? ああ、みんなできた、よし!」みたいな。
川上 そう、それでいっぱいいっぱいになっちゃうからおせっかい(笑)。
── ストリップは自分一人の戦いですからね。
小向 うん。
川上 自分の戦いって気づいたのは1回目のステージから分かったんですけど、今日の体調のまま、そのまま踊ればでいいんだって分かったのは何年目からだろう?
小向 結構やってからじゃないと分からないでしょ?
川上 そうなんです。だから、4、5年目ですよ。
小向 やっぱり、みんな気が付くのはそれくらいからなんだ。
川上 そうなんだ。
小向 うん。みんな悩むけど、5年過ぎたところから「なんで、あんなことに悩んでいたんだろう?」ってなるの。だから、「こうで、こうして、こうやらないといけないと思っていたんでしょ? もっと、抜いてやってみな」ってアドバイスすると、「やりやすいです」って言ってくれるの。良い意味で「手を抜け、手を抜け」みたいな。最初はお客さんが求めてくることに答えなきゃいけないっていう発想なの。それが仕事かもしれないけど、そこまでやるのは違うぞと。
川上 そう! 全員がそこまで求めているお客さんじゃないし、体調が悪くても、体調が悪いまま踊って喜んでくれるお客さんがめっちゃいるんです。
小向 そう。「今日は無理するな!」って言ってくれるの(笑)。
川上 「よく頑張った! よく頑張った!」って言ってくれるの。
小向 そういう時は「すまん」って言うんだよね。
川上 「いまの回は無理、本当に無理」みたいな、「すまん」公演が本当にあるんです(笑)。
小向 ポラ館(有料でポラロイド撮影ができる、お客さんとの交流タイムがある劇場)行くと分かるでしょ? ポラ館だと話ができるからね。
川上 ポラロイド撮影の時にお客さんと話ができるから、自分が「すまん」と思っていたことは出ちゃうじゃないですか。「ごめんね」って言ってはいけないのに、言っちゃった自分に罪悪感が生まれるの。
小向 思ったことを言ってくれるお客さんはいいよね。アンチもいっぱいいるかもしれないけど話を聞くと、「そういうことね」って思えるから。
川上 言い方は下手な人が多いです。
小向 多いけど、「ここがこうだからアドバイスしてきたんだ」って思えるよね。「うるせえな、こいつ!」と思いつつも(笑)。「そういう見方もあるよね」ってことを言ってくれるから、ちゃんと見ている。
川上 図星ですよね。人をしっかり見ていますよね。
小向 あと、私のことを怖がってポラロイドを撮りに来ない。「え! なんで!?」ってなるよ(笑)。
川上 あはは(笑)。
小向 私の機嫌が悪いんだなって思うと来ない。
川上 確かにこちらが疲れているんだなって思うと、ポラロイド撮影はめっちゃ少ないです。大阪の東洋ショー劇場のお客さんはおひねりで全部伝えるんです。
小向 最高だよね!
川上 ポラロイド撮影の時に苦しい体勢のポーズが続いたので気分が落ちたんです。それでメンタルがやられた時に、一人のお客さんが「よく、頑張ったね」っておひねりをくれたんです。あと、大千秋楽の時はお客さんが並んで全員がおひねりをくれるんです。千秋楽までみんな見守っていたんだっていう実感がやっと沸いて、ビックリしました。大阪は大阪でいいなと思いました。東京はまた違う良さがあります。
小向 東京はお祭りの時は盛り上がって、お祭りじゃない時はみんな静かにしている。劇場によってお客さんが全然違うから面白いよね。東京から地方公演に遠征に来たお客さんも、その地方の場に合わせるんだよね。
川上 「東京ではこの場面で拍手をしたけど、ここでは拍手をしない。あ、この場面か!」って拍手をしてくれるの。
── ストリップは奥が深いですね。そして、2022年2月に川上さんの浅草ロック座最終公演があるんです。ぜひ、小向さん観に行ってください。
小向 うん。今回も歌うの?
川上 歌います。
小向 歌も上手いもんね。カラオケにも何回か行っているよね。
川上 行ってます。
小向 AVデビュー前に一緒にカラオケに行って、「めっちゃ上手いじゃん!」って思った。
川上 スタンドマイクを用意してくれるんです。
小向 それを観ながら、私はテキーラを飲んでいるの。
── あらゆるところでお酒が出てきますね(笑)。毎回、川上さんから後輩女優にアドバイスなどがあるんですけど…
川上 「川上パイセンカウントダウン」なんです。
小向 パイセン、なんかアドバイスちょうだい。私はこれからどうしたらいい?
川上 あはは(大爆笑)。
小向 私どうしたらいいかな(笑)。
川上 いや~、本当にそのままでいてください。
小向 あはは(大爆笑)。このままでいいらしい。
川上 そのままでいてください。私たちはこのままでいましょう。これがまとめですよ。私たちはこのままでいたいです(笑)。
── AV女優の仲で10年に渡って和気あいあいとした関係はないですよ。
川上 そうですよね。
── しかも、こんな大物女優同士がこんないい仲っていうのは奇跡です。
川上 関係者もファンもみんな知らなかったでしょ(笑)。
── はい、ちゃんと先輩後輩の関係はあるのに、ざっくばらんとしていますからね。逆に小向さんから芸能界に進む川上さんにはなむけの言葉はありますか?
小向 同じままでいてください。あんまり頑張りすぎなくていいと思う。
── 川上さんは頑張りすぎますからね。
小向 そう! でも、自分で決めた道だから、それでよくない?
川上 自信がつきます。最高です。良い対談だった(笑)。