── 紆余曲折があって今の形になったんですね。
松尾 あまりにもそこに対してすり寄ってもらえないというか、「とりあえず内側を見せればいいんでしょ」みたいな子もたまいるんです(笑)。これは何十年も前に撮った「私を女優にして下さい FINAL DISTANCE」っていう作品から感じてることなんですけど、この時に「セックスはするけど自分のことは話したくない」って言う子が出てきたんです。
私を女優にして下さい FINAL DISTANCE
── 2002年の作品ですね。
松尾 それまで「なぜカメラの前でセックスをするんだ?」という問いを、さも当然のようにしていて、女の子たちも何らかの理由を喋ってくれていたんです。でも世代が変わってきて、おじさんと若い女の子の話しになった時に、女の子の目が「なんであなたにそんなことを言わなきゃいけないの?」という風に変わったんですよ。これが3人撮ったら、2人ぐらいそうなるケースが続いて、この時に僕は「もう自分のスタイルは通用しないのかもしれない」と、一度心が折れたんです(笑)。
梁井 これは先程の35歳の話と近い話ですよね。
松尾 本当に女の子たちがそういう目をしたんだよねー。昔は、気持ちを女の子の横に座らせて、横並びで撮れたのが、色々な仕事を積み重ねていくうちに真っ直ぐ正面に構えて撮る癖が付いてしまったんです。
── 横並びと正面……そんなに撮り方が変わるものなのですか?
松尾 横並びだとおっさんとギャルの会話でふざけていればいいのですが、真っ直ぐ構えるとキリっとしてしまう部分があるんです。なのでAV監督として成長していくと共に、青春とは別れを告げるのだと思いますね。横並びだけの画を撮ろうとすると、一つ壁ができてしまうんです。みのるとかは横並びで撮れていたタイプでしたよね。
梁井 みのるさんもずっと横で撮ってましたけど、「あれ?思ったようにいかないな」って思うことはあったみたいですね。
松尾 たしかにそういうのはあったのかもしれないね。元々みのるはテレキャノでもそうだったんですけど、カメラを正面に構えるのではなく、カメラを置いて横に座るっていうのがみのるのスタイルなんです。(タートル)今田もそういうタイプでしたね。
── なるほど。女優さんによって横で撮った方がいいのか、正面から撮った方がいいのかみたいなのってあるのですか?
松尾 単体女優を撮る時っていうのは前に回らないと撮れないので、そういうのを積み重ねているとやはり正面で撮る癖が付いてきちゃいますよね。単体女優の場合は「なぜ人前でセックスをするの?」という部分が関係無いというか、そこは話せない人たちが多いので、その子の一番良いところを撮ろうと思うと、真正面からのイメージシーンになってくるんです。本当は同時に横もやっていかないといけないんですけど、どうしても真正面だけになってしまうんですよ。
でも、たまに素直な女優さんもいて、そういう子に関しては横並びで話せるし、もしくは客観的にカメラを置いてずっと話を聞くとかもできるので、いつもそうやって撮影できればもっと味が出るのかもしれないとは思いますね。本当にプロフェッショナルな人だとそれが撮りづらくなってしまうので、横で撮ってると「なんで私にカメラを向けてくれないの?」っていう表情になる時があるんです。
ご飯を食べている姿を横で撮った時に、僕と話してくれればいいんですけど、それができるかできないかというのは結構大きいんです。なのでご飯を食べてるシーンを正面で撮っちゃって「美味しいです!うふ♡」みたいなのを自分で撮りながらも「本当はこういうのが撮りたいんじゃないんだよな」って思うことはあったりもします(笑)。
── 最後に『おうちでキャノンボール2020』の話に戻りますが、360°カメラで撮られたエンディングがめちゃくちゃオシャレだったと思いました! あれは松尾監督の案だったのですか?
松尾 あれは僕の希望で、あのためにカメラを買ったんです。今までバイクのシーンは撮っていたのですが、なにか面白いとり方ができればと思っていて。バイクの動画ってGoProをバイクに固定して撮るっていうやり方が多いのですが、あれがとにかく嫌だったんですよ(笑)。それ以外にバイクを撮る方法はないかな?と思って見つけたのが360°カメラだったんです。
── あのシーンは映像も不思議でカッコ良いので、ぜひこれから見る方にも注目してほしいなと思いました!!!
松尾 映画本編がWeb会議サービスの「Z」の6分割画面ばかりなので、最後ぐらいは抜けがないとこっちもやってられないですし、見てる人もそうだと思ったので一年後に撮ったんです!
── でも、「Z」でのバクシーシ山下監督と黒田悠斗さんの対比は色々な意味で面白かったです(笑)。
松尾 山下さんのお家は何の問題なのか、電波が弱過ぎてテレビ電話が一時できなかったりしましたからね(笑)。
── では最後に、これから『おうちでキャノンボール2020』を劇場で見られる方に一言お願い致します!
松尾 コロナ禍っていうのは等しくみんなに覆いかぶさって体感したものですよね。きっとコロナはこれから忘れ去られていくものだと思うし、もちろん忘れていいものだと思いますが、ちょっと振り返って「あの時こんなことあったよなー」っていうぐらいの軽い気持ちで見てもらえればいいなと思います。タイトルにはお堅いシリアスなモノなのかな? というようなビジュアルとキャッチコピーが並んでますが、全く違います! なので、映画館では今このご時世なのでマスクはしてますけど、全然笑ってもらって構わないですし、大いに楽しんでもらえる娯楽作品になっていると思います!
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以上3部に渡ってお送りした、カンパニー松尾監督と梁井一監督のSPビック対談でございました! 私はお二人の大ファンなので、1秒1秒が本当に夢のようなお時間でした……! 下に貼ってあるYouTubeでも「劇場版 おうちでキャノンボール2020」のお話をたっぷりとして頂いているのでぜひ見てね!!!そしていよいよ6月18日から京都、大阪、兵庫(名古屋は25日から)で公開です! 劇場に行って、コロナで失ったあの夏を取り戻しましょう!!
カンパニー松尾 @company_matsuo
AV監督。
ハメ撮りAVの第一人者。『テレクラキャノンボール』シリーズ、『私を女優にして下さい』シリーズなど数々のヒット作を持つ。近年ではアイドルとコラボレーションした劇場作品なども監督している。
梁井一 @HMJM_yanaiC
AV監督。
カンパニー松尾 監督率いるAVメーカー・HMJMに所属しているが、他社メーカーでも多数監督している。『テレクラキャノンボール2013』にも出演。
インスタ @yanaihajimee
リボルバー・ヘッド @RevolverHead01
ピン芸人。
代表ネタは、山田孝之演じる全裸監督の村西とおるのモノマネ。吉本若手マッチョ部としてクリスタルジムでパーソナルトレーナーも務める。
YouTube『リボルバーチャンネル』