80年代、私が10代の頃はおニャン子クラブの全盛期で、周りの子たちは何番の誰が好きだの、新しくメンバーに入った渡辺満里奈が可愛いだのそんな話題で持ちきりでした。
そんな中、私が憧れていたのは鈴木清順監督の映画「肉体の門」に登場するパンパンガールでした。
女たちは、米兵に体を売る娼婦となることで生き抜き、風が吹けばきしむバラック小屋で手に手を取り合って共同生活を送る。
人の醜さと愛憎うずまく世界に身を浸していく女の姿に強い憧れがありました。
私の日常は殺伐としていました。
周囲にも自分自身にも嫌気がさし、すべてを終わらせたいような気持ちで過ごす日々。
風俗嬢となったものの、肉体の門に登場する女たちのようにかっこよく振る舞うことなどできず、三つ指着いて、笑顔でお客様を迎える日々…
「癒し系だね」なんてことを言われると、自分の外見によりいっそう嫌気が刺しました。
そんな心の奥底に眠る棘のようなモノを今は写真に刻み込んでいるのかもしれません。
今回訪れたのはパンパンがいた街「軍港横須賀」
横須賀駅の東側一帯に広がる若松飲食店街。
細い路地に居酒屋やスナックが密集しています。
迷路のように路地が入り組み、同じ場所を何度も行き来してしまう、どことなく尾道の遊廓跡地を彷彿とさせます。
横須賀には戦前から軍関係者や関連産業で勤める労働者を慰安するために街の各所に遊廓が作られました。
昭和33(1958)年の売春防止法施行により姿を消しましたが、今も建物は生々しく残っています。
安浦、柏木田、皆ヶ作の三か所がよく知られている遊廓跡や私娼街となります。
横須賀の海軍が押し寄せた「皆ヶ作銘酒屋街」には現在もカフェー建築や料亭が残されていました。
入り口にはバーの鑑札や、珍しい茄子の意匠のある建物が現在でも確認できます。