“淫語ワールド” が時を超えて息を吹き返し、さらに様々なメーカーにまでデザイン面まで含めて綿々と伝搬し洗練し続けていたということが、今回の調査と考察で発見できた!
雑誌版『デラべっぴん』の伝説企画“オナマイド”を生み出した名デザイナー・ほうとう氏が選ぶAV秀逸パッケージ♡
綿々と伝搬し、洗練し続けていた淫語AV
いつの頃からかは解らないんですが、AVジャケットの表面が、もの凄い文字数のキャッチコピーで埋め尽くされているものが、随分と多くなった気がします。長いキャッチコピーなのかと思ったら、その全文を持って正式タイトルだったりする例も、これまた実に多い。
最新作のAVジャケットを眺めていたら、そのような大量の文字を《地紋》や《壁紙》のように扱っている面白いデザインが数点目についたので、今回はその現象について掘り下げてみたくなりました。
例えば、
や、
などは、横組みや縦組みの差はありますが、総じて読むことは可能な “キャッチコピーとしてのデザイン処理” です。
ところが、
や
同じくOFFICE K’Sさんの
は、文字の集積がモデルの背景と化し、文字なのにもかかわらず、もはや読まれることに執着していません。
この不思議なデザインの起源はどこにあるのかを、今回考えてみようと思います。
このような、細かな文字の集合体が画面いっぱいに大きく広がっているデザインの表現物として最もポピュラーなものは、何と言っても《新聞紙》でしょう。その見た目のデザイン性に着目し、実際の新聞を素材にしたアニメ作品があります。
映像作家の佐藤義尚氏が1991年に8mmで製作した『PAPERS』という短編実験映画がそれです。
これは同年、TBSテレビの『三宅裕司のえびぞり巨匠天国』という、インディーズ映像作家の登竜門的番組で紹介されて反響を呼び、後に毎日新聞のテレビCM用にリメイクされたほどでした。
チャカチャカと文字がフラッシュバックし、変容続ける様は、何やら多足類の虫が蠢めいているような、あるいは、ミクロな原生動物を顕微鏡で覗いた時の映像のようにも見えます。このムズムズっとくる寒々しさを、おそらく応用したのだろうと僕が目しているのが、1998年劇場公開の中田秀夫監督による映画『リング』に登場した《呪いのビデオ》です。
その再生画面の中程で「山が噴火 地元住民に警戒促す」といった新聞文字が空間に蠢めく場面に、僕は、その後に続く(今も語り草になっている)貞子の出現シーン以上の、ものすごい衝撃を受けました。
このような文字の集積は、新聞以外の表現としては《経文》のようにも見えます。
全身に般若心経を書かれた盲目の僧侶の怪談話『耳なし芳一』が、映画やTVで映像化された際の視覚的なインパクトは、経文それ自体や、そのようなルックの筆文字群に対して、より一層のおどろおどろしさや “呪詛的感覚” を、多くの日本人に植え付けたと僕は思います。
そのような感覚で文字という存在を眺めている僕などは、OFFICE K’Sさんのジャケットをじっと見ていると、その背景の文字地紋がムズムズと蠢き、僕に向かって女性のエッチな囁き声を発しているように感じてくるのです。
こういった面に、デザインの《魔力》や、文字というものの《呪詛力》を感じずにはいられません。
ところで、先に紹介した5タイトルのAVには、ある共通項がありました。皆さんもお気づきかと思いますが、どのタイトルも《淫語》がテーマなのです。
しかし、《淫語》がテーマだと、なんで一様に異常なまでの多量の文字が壁のように迫ってくるのでしょうか?
そこで《淫語》で検索をかけて、数々のAVジャケットを眺めた結果、僕の中である仮説が浮かび上がってきました。その仮説とは、ドグマさんというメーカーが、どうもその《淫語=文字の集積によるデザイン》セオリーの震源地なのではなかろうか、というものです。
それを証明しようと、そのセオリーが使われ始めた最初の作品、2009年7月19日発売の『淫語痴女 見下し・辱め・寸止め中毒の女 村上里沙』を皮切りに、時系列で6年以上にわたる同社の淫語モノのデザインの変遷をまとめてみましたので、ご一緒に眺めてみましょう。
後半へ続く