加美 川上さんはデビューしたころは「楽しくない」って言っていたじゃないですか、いつから楽しくなりましたか?
川上 私は5年かかったかな。ある女優さんは3年かかったって言っていたし、別に慣れようとしなくていい。
加美 無理にですか。
川上 うん。
加美 AV女優としては頑張ろうと思うんですけど、サブの仕事も楽しくなって、本業が劣ってきた感じがするんです。
川上 モチベーションを探さないとだね。
加美 そうなんです。「楽しい! 頑張ろう!」とは思えるんですけど、AVに出ていて「これはエロいかな?」とか、「ユーザーさんはこの作品でヌけるのかな?」って考えちゃうんです。
川上 女優歴を重ねて作品に対しての要望が増えてきているだろうし、シチュエーションも変わってきているはずだから悩むのは分かる。私はAVを10年やってきた中で、モチベーションを探すのが一番大変だった。AVをもっと好きになるためにスタッフさんたちとコミュニケーションを取る時間を作った。前にいたプロダクションはAV監督との飲み会とかがあったし。あっ! でも、いまはコロナ禍でないから!
加美 打ち解けられないんですかね。
川上 昔は3日撮りもあったから、撮影後に「焼肉行こうか」ってこともあったし、いっぱい打ち上げがあった。
加美 楽しそう~!
川上 そこで「この人たちのために頑張るぞ」とか、「プロデューサーさんが私たちのために涙を流しているから頑張るぞ」とか思った。私は人のためにしか動かないから、それがモチベーションでやってこられたね。その後は私のAVを観て映画のオファーがくることが多くて、おかげで名前のある監督との飲み会の場が開けたりした。そういう人たちがAVを観てくれているから、AVの作品のクオリティも上げないといけないっていう考えにシフトして、自分一人の闘いになった。
加美 私はもともと演じることがすごい苦手で役に入れなくて「私」になっちゃうんです。
川上 演じるのが恥ずかしいから?
加美 最初はそれもあって、「こんなこと言えないよ」っていうタイプでした。だから、役がイヤでドラマモノが苦手だったんです。
川上 いまも苦手?
加美 前よりは好きになりました。でも、セリフを覚えるのも苦手だし、想像力が欠けているので、自分のままでいっちゃうんです。
川上 自分でそっちが面白いと思っているから、そう演じているんでしょ?
加美 そうなんですかね?
川上 サービス精神はある方なのかな?
加美 ある方だとは思うんですけど、ふざけた方にいっちゃってるのが心配なんです。「自分の作品は抜けるのかな?」って思います。ファンから「抜けるけど笑えるところがあるよね」って言われることがあって。
川上 いいことじゃないのかな。
加美 いいことなんですかね? 「エロとは?」って考えちゃうんです。
川上 「ヌける」って言われているからいいことなんじゃない。どこが不安なんだろう?
加美 AVはすごくいっぱいシリーズやジャンルがあるじゃないですか。プロデューサーさんからも「なにかの役を演じるよりも、加美杏奈の状態で出演した方が数字はいい」って言われるんです。でも、長くAV女優をやっていくのなら、チャレンジしないといけないじゃないですか。例えば痴女とかすごく苦手なんです。言葉も出なくなるし、レビューにも「語彙が少ない」って書かれていて。責める行為や主導権を握るのが苦手です。
川上 責める面白さよりも、テンパっちゃう方が出てくるの?
加美 そうなんです。
川上 MかSだったらどっち?
加美 ドMです。
川上 私もドMだからはじめは痴女をやりたくないって言っていたの。でも、「川上奈々美」の痴女をやろうと思って、痴女作品にも出始めた。「川上奈々美の痴女なら、この言葉は言いません」っていう路線に変えて、自発的に出る言葉にした。例えば、自分がドMだからやってもらいたいことを思い出してやってみたの。それを実践して、男優さんが本当のドMなら良いリアクションが帰ってくるってなるから。
加美 相手の反応が帰ってくると嬉しいですよね。
川上 そうなるよね。あとは間を怖がらないこと。堂々として貫録を出すの。
加美 それが難しいんです(笑)。蓮実クレアさんはすごいじゃないですか。
川上 すごい!
加美 出演回数を重ねているっていうこともあるでしょうけど、ああいう演技はどうやっているんだろうって思っちゃうんです。
川上 自信だと思う。自信でしかないと思う。私は9月に体力的にも精神的にも忙しすぎて疲れて、痴女ができなくてカメラを監督さんに止められ撮影をバラシたの。
加美 え~~!
川上 痴女をやるには心の余裕がないと誘導できないから、「今日の私はできません」って言ったの。10年で初めてメンタルをやられてバラシちゃったんだけど。
加美 10年で初めてですか!? そんなこともあるんですね。
川上 引退を決めた女優はいろんな思いを抱いているから、スタッフさんにも理解してもらえて「無理しなくていいんだよ」と優しい言葉をたくさんかけてもらえてバラシた自分を許してあげれたんだよね。
加美 まず10年活動していることがすごいですもん。ある女優さんに「1カ月単位で(AV女優が)消えていくから」っ言われたこともあります。
川上 1年やればベテランだと(笑)。
加美 「そんなことある!?」って思っていたので10年はすごいですね。余裕か・・・、なるほど・・・。
川上だから心の余裕や自信を持って、「私があなたを抱いてあげる」っていうスタンスを心の底から持てるようになるにはどうしたらいいかを考えよう!
加美 分かりました!
川上 それは自分次第だよね。
加美 自分次第ですよねそれも。
川上 全てそうだよ。
加美 本当にいままでなにも考えて生きてこなかったなと思いますもん。
川上 考えて生きてるよ。そこのスイッチさえできればできるから大丈夫。
加美 スイッチ探します! 頑張って探さなきゃ。
川上 それで楽しんで!
加美 はい。
対談後編は明日公開!!