—— 私も毎年M-1予選には出ていますが、一回戦を通過するだけでも相当なハードルだと思います!どんなネタで一回戦を通過されたのですか?
タイガー 2019年に1回目に出た時は「全裸監督」っていうコンビ名で出ました。ネタはまず「自分達はAV監督です」ってことを紹介して『AV監督をやってると「日常でもエロいこと起こるんでしょ?」って言われるんですけど、実際は全然起こらないんですよ。』ってボケの僕が導入して、「でも実はこの前エロいことより、怖いことが起こりました。」って言ってコントに入るんです。それで僕は怖い話をするんですけど、実際はエロい話ばかりして、ツッコミが「それエロくない?」ってやり取りをするネタでしたね。
—— 構成がしっかりしてる(笑)。
タイガー それを最初は4分で作って、一回戦は2分なので削って、二回戦は3分なのでまた微調整してっていう形でやりましたね。
—— ガチ過ぎます! ネタはどちらが考えているのですか?
タイガー ベースはどりかわ君が作って、ネタ合わせをしながら「このボケはちょっと面白くないな」って話し合いながら、二人で作っています!
—— ネタ合わせは結構されたのですか?
タイガー めちゃくちゃやりました。ファミレスでネタの話をして、カラオケボックスに行って練習するみたいな。
—— 完全に若手芸人の流れと一緒です(笑)。
タイガー 一回戦に受かって二回戦まで少し時間があったので、ネタを調整する為に下北GRIPっていうところでやっているフリーライブに出たりもしました!
—— いやそれ、エントリー料を払って若手芸人が出るライブじゃないですか。僕もコンビを組んでいる時は出ていましたよ。
タイガー そこでネタをかけて、ウケが悪かったところを修正してみたいな感じで二回戦に臨んでいました。「あそこは意外とウケないな」とか「あの後半のボケは必ずウケるから、序盤を強くするためにちょっとフリを変えてみようか」みたいな感じで。
—— 本気ですね。
タイガー 一回お笑いの話をちゃんとしていいですか?
—— もちろんです(笑)。今日はタイガー監督のM-1への想いを伺いに来ましたので!
タイガー 今の漫才はもう進化し過ぎているんです。例えば去年のM-1決勝でのニューヨークのネタ。あれは小さい犯罪を重ねていくネタだったじゃないですか。今までは、それをベースにしたボケのやり取りだけで「面白い!」ってなっていました。嶋佐がボケた後に屋敷が「それ両津勘吉ばりに暴れとるやないか」みたいなツッコミをする。今まではこれで終わっていたんですよね。でも今は、この後に嶋佐が「こち亀をタダで見れるサイトあるんですよ」みたいな、例えツッコミにさらにもう一個乗せないといけない。多重構造のネタが当たり前になってきているので、めちゃくちゃ難しいですよね。
—— 分析が素晴らしいです!
タイガー 僕なんて全然ショボいのでアレですけど、レベルが高すぎるのでめちゃくちゃ考えないといけないですよね。
—— そんな中、今年は「監督」というコンビ名に改名されて一回戦を通過されましたが、どんなネタで勝負したんですか?
タイガー 基本的には一昨年のネタをブラッシュアップしました。一昨年のは、怖い話をしてもエロいことが起こるのでツッコミが全て「いやそれエロくない?」ってワードだけだったんです。この時までは相方がうるさくツッコんでいたんですけど今はこのうるさいツッコミは流行らないので、今年はツッコミのワードを変えたり、リアクションでツッコミをしたりと、バリエーションで見せるやり方に変えたんです。
—— 変更点を踏まえて会場のウケはいかがでしたか?
タイガー 一昨年よりはちゃんとウケましたね。あとネタが単調だったので、ラスト30秒で大きいボケを増やして畳み掛けるみたいな構成は意識しました。自信があるボケが二つあって、前半と後半に散っていたんですけど、それを後半に持っていったらドッとウケる体感があったので、結構ガチャガチャにいじったのがしっかりとハマりましたね。
—— 三回戦まで勝ち進むとGYAOの配信がある中で漫才ができますが、ここではどんなネタをやろうと考えていますか?
タイガー 二回戦までは構成を意識して何とか通過して、三回戦はルミネtheよしもとでできるので、アマチュアとして無茶苦茶なことをやりたいなって思っているんです。AV監督なのに社会情勢を語って、「お前寝取られを撮っているのに不倫問題を語るな!」みたいな。
—— めちゃくちゃ面白そう(笑)。
タイガー そういうAVに絡めた「AV監督がそれを言うな!」っていう、がなったネタをどうしてもやりたいんです。僕らはお笑いが好き過ぎるが故にやっていて、お笑いをバカにしているとかは一切無いので、三回戦まで行ったら「芸人さん、僕らは一生懸命やってるので許して下さい。」って少しは言えると思うので。
—— ここまでのネタ作りに対する熱量を聞いたら、本気以外の何ものでもないですよ。
タイガー 「AV監督の調子乗りが記念受験してる」みたいに思われたくないんです。
—— 記念受験の人だったら最後に一番いいボケを持っていくような高度なネタの構成にしないで、一発目から良いボケを言うと思います(笑)。
タイガー そう言えばリボルバーさんもユニットで一回戦を通過されていましたが、一回戦は僕らと同じ日でしたよね。
—— そうでしたよね。順番が離れていて、実際にはタイガー監督のコンビのネタは見れなかったのですが、その日その日のTOP3がM-1公式YouTubeに載るので「監督」のネタを楽しみに待っていました。