—— 他にもあれば教えて下さい。
きむら GIGAさんで初めて特撮モノを書かせてもらったのですが、これも絶対に外せない型があるんですね。
美少女仮面オーロラ 魔人エッチカンカーメンの淫襲
—— 何十年も人気なメーカーさんですからね。
きむら そうなんです。でもこの十年の中でも手法や流行りは色々と変わってきているので、流行りを取り入れながら、型を大切にして脚本を書いたんです。特撮は完全にドラマなので、出ている女優さんはお芝居に前向きな方ばかりなんですね。書いていて、ドラマモノAVが好きな人ほど、特撮AVは刺さるのではないかと思いましたね。
—— 特撮に興味がなくても、ストーリー重視でAVを見ている方にはオススメということですね。
きむら それで僕が書く上で「羞恥」に関する部分は、過去作よりコアな内容になっていると思います。1対1になってしまうと羞恥心がなくなるじゃないですか。密室の中で、女優さんと男優さんが絡んで「恥ずかしいです」と言っても、それは成立していないと思うんですよ。なので先ほどもお話させてもらったように、リアクションしてくれるエキストラさんにこだわって「正義の味方が敗北して、こんな辱めを受ける」っていう部分を丁寧に描くことを意識したんです。
—— たしかによく「羞恥モノ」と書いてあるのにずっと二人っきりで、「これは誰に対して恥ずかしいんだろう?」っていう作品はよくありますよね。
きむら 誰の前で辱めを受けるのが一番羞恥心が煽られるのだろう? という部分を突き詰めてこの作品を描いたので、そこを見て頂けたら嬉しいですね。
—— 羞恥モノなのに二人っきりの作品があったりと、AVでは違和感がある作品もたまにありますが、きむらさんから見て他に違和感を感じた作品はありましたか?
きむら 僕以外の方もそうだと思うのですが、AVあるあるがそもそも違和感だと思うんです。学園モノの企画を頂いたことがあったのですが、予算や時間の関係で「女優さん三人でエキストラさんも三人でお願いします」と言われました。そんな学校なんて無いですし、いくら頑張っても想像力だけじゃ補いきれないじゃないですか(笑)。
—— そうですね(笑)。一人先生役に回したら、男子生徒は二人になっちゃいますもんね。
きむら なので設定を学校じゃなくて予備校に変更してほしいとお願いしたんです。なおかつ予備校の頭の良いクラスという限られたコミュニティにしてしまえば、女子生徒二人、男子生徒二人でも成り立ちますよね。あと「女の子を無理矢理犯す」シチュエーションなのに、いざ始まったらマットが敷いてあることがあるじゃないですか。
—— 教室なのに、フカフカしたマットが突然現れますよね(笑)。
きむら これが単体モノで「○○ちゃんが教室でエッチなことをしちゃいました」ってAVだったら全然成立すると思うのですが、ドラマモノとして見たらもの凄く引っかかりを覚えてしまいます。「AVだから」という演出が一つでもあると、見ている人はそれ以降のシーン、エッチな気持ちで見れなくなってしまうことがあると思うんです。そういう時は無理を言って「マットはおかしいと思うので、立ちバックで発射に変えてもらえませんか?」とお願いすることもありますね。
—— 「AVだから」で片付けられてしまうことを一個一個潰す作業なのですね。私も最近見た作品で、弟の借金を姉がカラダで払う内容があったのですが、姉が住んでいる家には大型テレビがあったんです。かなりお金持ってる家のはずなのに、なんで姉はカラダで払うんだろうっていう疑問がずっとありました(笑)。まずはテレビを売ればお金になるじゃないですか。
きむら たしかにそれは気になりますね(笑)。そのテレビを売りたくない理由が作中に描かれていればいいのですが、尺の都合でそこはやむを得ず「まあAVだからいいだろ!」って飛ばしてしまう部分が多いのだと思いますね。
—— きむらさんはどんな映像作品に影響を受けてきたのですか?
きむら 僕は『世にも奇妙な物語』にエロスを感じたのが原点ですかね。
—— 意外なところが出てきましたね。詳しく聞かせてください。
きむら 突飛な設定を15分ぐらいの短編の中で矛盾なくしっかりと説明して、しかもフリとオチも付けて起承転結がしっかりしていることにエロスを感じるんです。エッチなお話もいくつかありますが、もちろん地上波なのでカラミなんてできないですし、少しおっぱいが出る程度です。でもネットで調べると「世にも奇妙な物語のあの話でヌケた!」っていう人が結構いるんです。逆に言えば、ディティールがしっかりしていれば、過激なことをしなくてエロが薄くてもそこにエロスを感じてヌイてくれるんだって思ったんです。なので、これは意識している部分ですね。
—— 最後の質問です。今後はどのような作品を撮っていきたいですか?
きむら 今の風潮的に大人数での撮影が難しいのでできるかわかりませんが、群像劇みたいなのをAVで描いていきたいですね。今だとメインの女優がいて、それを相手にする男優さんがいてという柱で物語は進行していきますが、群像劇だと「学校のサークル内の、ここのカップルとここの友達がこうなって」みたいなトレンディドラマ的なところにエロスを表現できればなっていうのはありますね。これを言われてしまうと僕の仕事的にアレですが、「AVよりも深夜のエッチなドラマの方がヌケる」っていう人も多いと思うんです。
—— お風呂シーンで女の子のおっぱいが出たり、昔で言うとバカ殿とかで裸が映ったりしただけでヌケるっていう話は、たしかによく聞きますね。
きむら そうなんです。なぜこれでヌケる人がいるのか?と考えた時に「地上派のあの時間帯に、女の子の裸が出る希少性」だと思ったんです。おっぱいにじゃなくて、その状況にエロスがあるのだと思うんですね。なので映像の中でAV女優さんが裸を晒すよりも、街中で歩いている女の子のスカートが風で捲れてパンツが見えた時のエロ度の方が高いと思うので、なんとかこういうのをAVに落とし込みたいなって思っています。
—— たしかにそうですよね。視点を変えて、状況のエロさのスポットを当てるということですね。
きむら 今は規制が多くなって、できることもどんどん少なくなってきています。その中でエロさを出すには、そっち方面にシフトしていくのも一つの手なのかな? と思っています。
————–
以上、人気シリーズ『催眠光線で支配された○○』を担当するなど売れっ子のAV脚本家、きむらさんのインタビュー後編でございました!
「希少性にこそエロスがある」というお話には納得させられましたね。ぜひ、きむらさんにはこの「希少性」をAVに落とし込んで、新しいエロスが詰まった作品を撮ってほしいなと思います! 今回きむらさんとお話をしてみて、率直に徹底したこだわりを持ってAVを作ってくれていることが、AVが大好きなユーザーとして嬉しかったですね。きむらさんのような方がいる限り、AV界の未来は明るいと思いました。ぜひ皆さまも、そんなきむらさんの作品をチェックしてみて下さいね!
きむら @CQDESDjU011DvII
AV企画・脚本家。
ユーザー目線を意識し、「AVの矛盾点をなくす」というこだわりある脚本に定評がある。代表作はSOD『催眠光線で支配された〇〇』シリーズ。