「私自身、なぁさんの引退会見の構成台本も書いたりして、この1年で見られなかった景色をめちゃくちゃ見られました」
――話を聞いていると川上さんと灯さんの関係はフラットですよね。
川上 こういうタイプの人にこれまで出会ったことがないんです。
灯 そうですか?
川上 撮影での秘話があって実は地元の昔の友人には出演を断られているんです。
灯 会いたかったよね。
川上 プライバシーを守りたいから撮影は出られなかったんです。
灯 地元の親友ですよね。
川上 実は絶交しているんです。私がAV女優になったから絶交されたんです。
――どうしてAV女優に対して拒否反応を起こすんですかね?
灯 それも一つの普通だと思う。映画でもそこの温度感を無視しないようにしたい。
川上 それが普通だよね。自分の好きな友人が大変そうな仕事をしはじめるのは嫌じゃん。
灯 うん、うん。
川上 そういう愛だと思います。
――なるほど。愛情の裏返しなら納得できます。
川上 自分の子供がAV業界に入ったら絶対にイヤですもん。まずリスクを知っているのかと話します。
――それは理解できますし、川上さんだからこそ言う権利があります。それでは、まだまだ撮りたい場面はありますか?
灯 トラブルもマンガみたいなシーンも撮れたし本当になくて、見どころだらけだと思います。
川上 私も達成感だけだよ。
灯 私自身、なぁさんの引退会見の構成台本も書いたりして、この1年で見られなかった景色をめちゃくちゃ見られました。
――テレビや映画業界とは違う景色でしたか?
灯 一緒だなって思うことの方が多かったです。最初からなぁさんには特殊な環境だよって言われてたけど、そこで出会った人たちは、これまで接してきた方と同じように、仕事に取り組み、家族があり、そういう人達でした。
川上 ちゃんと人間なんだ! でも、それはアダルト業界の身内では伝えられないから、第三者に入ってもらったこういう機会は大事でした。
――今回はドキュメンタリー映画でしたが、芸能界で活躍している灯さんは川上さんと一緒にドラマもやりたいですか?
灯 めちゃくちゃ一緒にやりたいです。
川上 敦生が書いたセリフを言いたいですよね。
灯 それは脚本家冥利に尽きますよ。
川上 それは芸能界でのちょっとした目標だよね。
――無理な話ではないですから。
川上 内田監督は面白がりそう!
灯 いま内田さんの名前が出て現実味が出てきた! 実現させたい!
――内田監督、灯脚本、そして演者は川上さんで作品ができそうですね。
川上 めちゃくちゃやりたい。
灯 化学反応起こすべし。
――ぜひ、期待します。悲しいかな多くのAV女優は「引退=廃業」なんです。でも、川上さんは今後、芸能界に本格的に足を踏み入れるので楽しみです。
灯 このドキュメンタリー映画も「新たな希望」という終わり方になるし、階段を上がる第二のステージを掲げているのはなぁさんの特色です。そこは特異性として観てほしいし、めちゃくちゃ面白いです。
川上 ステージアップは人生のずっとキーワードだね。
灯 この10年間もステージアップしているから、このポジションに来ているんですよ。
川上 堅物だった私が自分自身いろんなことを面白がれるようになった気がする。
――話も盛り上がっていますが、最後に第二のステージに進む川上さんにはなむけの言葉をお願いします。
灯 今後とも一緒にもの作りができたら最高だなと思います。
川上 次は大きな会社が入って商業でやりたいね(笑)。
灯 いまと一番離れたことをやりたい(笑)。
川上 あと、撮影現場ではお互い会わないけどエンドロールに2人の名前が載っているの。
灯 かっこいい!
川上 私はプロとしてオファーがあってやりたい。
灯 いいですね。
川上 敦生はどっちがいいの? 今回みたいに知り合いと一緒に作り上げていく方が楽しいのか、場が用意されたところでやりたいのか?
灯 もちろん商業。知らない人に喜んで欲しい。商業至上主義でやりたい。
川上 テレビっ子だもんね。
灯 自主制作は挑戦の手段だけど目的とは思ってない。
川上 同じく!
灯 商業の大きな映画やテレビで会いましょう!
川上 本当に! 好きなものが一緒でよかった! 自分の立ち位置もそこに持っていかないと「プロ」とは言えないからね。
――次に2人が会うときは誰かのオファーがかかった映画やテレビで、2人の名前がエンドロールで見られるところですね。
川上&灯 そうです!
灯敦生Twitter:@tomori_at
映画『裸を脱いだ私』川上奈々美(なな実)ドキュメンタリーTwitter:@hadakawo_nuida