毎日、劇場に行っているだけで偉いじゃん!
── 最後の浅草ロック座公演中にどうして目覚めたんですか?
川上 引退公演だからこそ、自分への期待値が高いんです。高すぎるからこそ、もっとできるって思うんです。しかも、引退公演だからちゃんとやらないと、踊らないと、歌わないとっていう期待値がありすぎたんです。
引退公演だからこそロック座からもらった振り付けがめちゃくちゃ難しくて、基礎がないと踊れない振り付けが多くて。もちろん私はバレエの基礎がなくて。体に何度っていう感覚が染み付いていないと踊れないジャンルだったんです。
小島 何度って斜め45度みたいな?
川上 まさにそう!
小島 無理じゃない?
川上 ステージの中央から斜めをとるとか、そういう感覚を体に染みつかせるのは幼少期からバレエをやったり、何年かバレエをやらないとできないことだったから完全にできていなかったの。だから、本番中はすごく自分を苦しめてた。
小島 そうなんだ。もう練習の段階どころか、本番中もそんな感じだったんだ。
川上 100ステージあるから全部をちゃんとやりたいのに、「踊れていない、クソ~!」って悔し泣きしながら毎日やっていたの。
小島 想像できる。
川上 ステージ上で泣いていたんだよ私。そんな姿をファンが見たら嬉しくないじゃん。
小島 でも、そこまで本気で向き合っているからグッとくるものはあるよね。嬉し涙じゃなくて悔し涙だから、「頑張れ」って見守りたくなるよね。
川上 お客さんもめっちゃ力が入っているのが分かった。公演中に声が出なくなった時期もあって、歌えなくなってなにをやっていいのか困った時に、お客さんから「大丈夫だよ」っていう感情の手拍子を感じたの。
あとは矢沢ようこ姐さんが、「自分のいまのパフォーマンスが気にいらないのかもしれないけど、まず第一優先はお客さんを楽しませることでしょ」って言ってくださったの。すごい優しく言ってくれたけど、強く感じたの。
小島 確かにハッとする言葉だよね。
川上 「そ、そうだよなあ」って思った。ようこ姐さんは本当にすごくて菩薩みたいな存在なの。
小島 しかも、相談したわけではなくて、感じ取って言ってくれたのはすごいよね。ようこ姐さんみたいになりたい。
川上 ツイッターに「スランプ」って書いたの。
小島 じゃあ、ようこ姐さんはそれをチェックしてくれていたんだね。
川上 楽屋でも緊張感を私が与えていたし、全部見ていてくれる。いままでの公演は私がトリだから引っ張って行かなきゃってやっていたんだけど、その体力もなくて、みんなが「大丈夫かな?」っていう雰囲気になっていたから、「これはダメだ」と思って楽しまなきゃって思った。でも、急に楽しめって言われても、「どうやって楽しむんだろう?」って考えてしまう。
小島 気持ちを笑顔に持っていくのはしんどくて、それを意識してしんどいと思いはじめると泣きたくなるんだよね。本当はできるのに、できない自分はなんだろうってなるよね。
川上 まさにそう! それを経て開き直れたんだよね。
小島 すごい。
川上 そこから踊れていなくても、歌えていなくても、伝えたい気持ちがあるはずなんだから、その気持ちさえステージに持って行けばいいやと思ってやっていったらすごく気持ちが乗ってきて、上手くいくようになったの。その時に開き直るのと同時に、自分をちゃんと誉めてあげようと思ったんだ。
小島 大事!! それはすごい大事よ!!
川上 「毎日、劇場に行っているだけで偉いじゃん!」ってちゃんと自分を愛でようと思った。
小島 ロック座ってすごい激務だと思うの。それに挑んでいる気持ちがすでにすごいことだよ。みんなAVを卒業する時にロック座をやるから観に行くのね。だから、「やりなよ」って言われるけど、私は絶対に無理! 大変じゃん! みぃななは「もうやらない」って言うけど、毎回やってるじゃん。
川上 やってるよね。なんでやるんだろうって思ってる(笑)。
小島 でも、ロック座に立った人にしか分からないなにかがあるんだろうな。(上原)亜衣ちゃんもそうだし。あんなに大変なことなのに、それを乗り越えた人にしか見えないなにかがあるすごい場所だなって思う。あのキラキラなステージを見ながら、「なんなんだろう?」って感動してる。
川上 そういう思いで観てくれてたんだ! 公演中に何回も限界を超えるから、それが快楽になってくるの。それは同時に破滅的な要素も含んでいると思う。
小島 なるほどね。
川上 自分からその境地に行かないと、極限まで行かないし、そこまで行かないとお客さんは魅了できないし。
小島 すごいなあ~。
川上 自分で振りを付けるところがあるから、途中で振り付けを変えたの。その振り付けの部分は自分で自分をずっとさすっていた。
小島 愛でて、愛でて。
川上 そう。足もよく上がってるねって自分を抱きしめてあげたの。
小島 抱きしめ係として行きたい。
川上 ははは(笑)。観に来てくれただけで抱きしめられているから。
小島 それはよかった。私が観に行ったのは後半だったから、みぃななは楽しいモードになっていたんだね。いま泣いてるね・・・。
川上 (思わず涙を流す)今日の対談はティッシュがいりますよ。
小島 なにか対してそれだけ真剣に向き合えることってすごくステキなことだよね。もちろん一つ一つのお仕事に対して頑張るから、それが次のお仕事にもつながるし、みぃななは常に成長中な感じですごいよね。
川上 宇宙人からちゃんと人間になってきた気がする(笑)。
小島 元からちゃんと人間だったよ(笑)。でも、常に成長しているのはすごくステキだよね。すごいよ!
川上 こじはそういうことが当初からできていたから、こじに申し訳なかったと思ったの。
小島 えっ!?
川上 私はピリピリしていた時期があったから。
小島 でも、それがみぃななの魅力なんじゃないかな。一生懸命、全力で激突しに行くから、それがみぃななの良さなんだなって思った。
川上 もう激突したくないんですよ。
小島 大人になったね。
川上 あまり人にピリピリを感じさせたくないんですよ。
小島 話を聞いていると、みぃななは人やお客さんの表情をすごくキャッチするよね。
川上 だから、いろんな人に申し訳なかったって思う(笑)。
── 昔からピリピリを感じていたんですか?
小島 私は1回も思わなかった。鈍感なのかな?
川上 ここ最近は会わなかったから、会わない時は「いま会うのは違う」って思ったのかなって。
小島 純粋に私はみぃななが忙しいからだと思っていた。恵比寿マスカッツにお互いがいた時は、「遊ぼう!」って言わなくても、現場で会ったり、帰りの車内で話をしていたじゃん。恵比寿マスカッツがなくなって仕事で会わなくなってから、ご飯に行かなくなったのかな。なんか忙しそうじゃん。
川上 ずっとバタバタしているから(笑)。
小島 みぃななは本当にストイックじゃん。
川上 怖い、自分が・・・。
小島 バイタリティーモンスターだし。
川上 そんな自分が怖いよ(笑)。
小島 だから、そういうみぃななに「ご飯に行こう」って言いづらかった。でも、落ち着いたら会うんだろうなって思ってた。
川上 だから、私の写真展や浅草ロック座に来てくれて、めっちゃ嬉しかった。
小島 みぃななも私の10周年イベントにも来てくれたじゃん。今月末も「ご飯に行こう」って約束したから、そんな関係じゃないのかな。
>>この続きの対談中編は明日公開!!<<
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